米陸軍将校のイラク従軍拒否
日系3世のワタダ米国陸軍将校がイラク従軍を拒否した。彼の発言から抜粋。「They must realize that this is a war not out of self-defense but by choice, for profit and imperialistic domination. WMD, ties to Al Qaeda, and ties to 9/11 never existed and never will.」「イラク戦争は自衛のための戦争では無く、利益と帝国主義的支配のために意図的に起こした戦争である。イラクには大量破壊兵器やアルカイダとの関連や9/11テロとの関連などは全くなかったしこれからも絶対に発見されることはないだろう。」だから「理由のない戦争には行けない」という主張。この文句自体はここ数年多くの反戦運動家が述べてきているが、アメリカの現役軍人、しかも将校という指揮を執る立場の人間からの発言であるところが大きい。これにより軍法会議にかけられ有罪になると禁固4年の実刑になるらしい。ブタ箱にぶち込まれることを覚悟の上でのことなので、安っぽい反戦運動とは一線を画するといえそうだ。今回軍法会議が始まるということで日本でも新聞報道などがなされるようになったのだが、去年の6月にはすでにこの人、公にイラク従軍拒否を明言していたそうだ。退役軍人による平和集会で意見を述べていたらしい。(上記の抜粋はそのときの声明文から)そして先日ネットでこのニュースの続きを見てみると、なんとこの軍事裁判、裁判官の判断によりmistrial(無効審理)に終わったというのだ。要するにチャラ。審理開始前の検察と被告間でかわされた合意規定に問題があるため裁判が不能であるとのことだ。(元ネタが法律用語混じりの英文なので今ひとつなんのこっちゃよくわからんのだが)元々ワタダ被告としては従軍命令を拒否した罪は認めて禁固刑も辞さなかったようだが、彼は裁判で従軍拒否の理由としてイラク戦争の正当性を争点に持ってくるつもりがあった。しかし裁判所側は軍事法廷でそのような判断をするのは不適当として戦争の正当性については争点としないと明言していた(実際これが争点になると国を挙げての大騒ぎになり米国の威信が地に墜ちる可能性があるのだろうなー)。ところが検察と被告との事前合意規定(この用語がよくわからん)の中に、公判が始まればどうしてもイラク戦争の正当性を問題にせざるを得なくなる可能性を裁判官が読み取ったかのように思える。「このまま公判に入ったりしたらえらいこっちゃ。」と判断したのかなと私は想像しているのだが、詳しい方がおられたお教え下さい。元ネタはここhttp://www.thankyoult.org/content/view/1025/23/です。しかし考えてみるとこの裁判が無罪になれば軍としてもイラク戦争の違法性を認めたと解釈されるし、有罪で禁固刑となれば彼は間違いなく反戦勢力のヒーローとなりイラク戦争の違法性を問う声は一段と高まる可能性がある。どっちにころんでも大変な爆弾をかかえたことに軍事法廷が今さらながら気がついたということだろう。超大国であるアメリカは、正当性のないイラク戦争を起こしたことに対して外から厳しく責任を追求されることなく過ごしてきた。イラク戦争の矛盾はアメリカ国内でボディーブローのようにジワジワときいてきているように思える。ワタダ将校の件でこの矛盾はさらに明らかとなるのだろう。時期大統領選の民主党の有力候補としてヒラリーが注目されているが、彼女は開戦当時イラク戦争を指示していた。これは今となっては大きなマイナスになる。彼女が現政権のイラク政策に何を物申したところで説得力はない。一方開戦当時からイラク戦争反対を訴えていた黒人のオバマ上院議員も立候補を表明した。ひょっとして彼の方が有力候補になるのではと思ったりする。ゆっくりとではあるがアメリカ国内がようやく矛盾に気づき始めていることを期待する。イラク戦争の違法性がアメリカ国民の多くに受け入れられたとき、開戦当時真っ先にアメリカを支持した当時の日本の指導者達の責任はどう問われるのだろう?