久しぶりに見るER
ここ数年、医療ドラマERを見てなかったんですが、どうも毎週土曜の夜中1時頃にやってることがわかって最近また見ています。なんか知らん間に登場人物がすっかり変わってしまっているんですが・・・(後で調べたらこれは再放送分でER??らしい。 最新版の??はBSの方でやっているようです。)昨日はALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病にかかった患者の話でした。いつもはいくつかの話が同時進行で進むドラマですが、今回は番外編という感じでこの患者とアビー(レジデント3年目の女医さん)との物語です。患者は医大の生化学の教授で、ERの若手医師の多くが彼の講義を聴いて医師となっています。その教授がALSの末期状態で肺炎を併発し呼吸困難となった状態でERに運ばれてきます。人工呼吸器を用いて延命措置をするか否かが問題になります。彼自身はこれ以上の延命は望んでいないようですが、アビーは彼に病気と最後まで闘ってほしいと望んでおり、半ば強引に気管切開を行います。もう一度状態を立て直せばある程度の期間生存ができるし、障害者用意思伝達装置を用いての意思疎通が可能なので生きることに充分意味があると彼女は考えたのでしょう。しかしそれ以上の思いが彼女にあることがドラマの最後に明らかになります。人工呼吸器につながり意識を回復した彼は、アビーに「呼吸器を外せ」と命令しますが、彼女にはできません。彼は「自宅に帰って呼吸器を外す」と宣言し、電動車イスでさっさと病院から出て行きます。アビーは彼の前に立ちはだかって、もう一度病気と闘うよう懇願します。治療すればまだ生きられる。その間によりよい治療法がみつかるはずだと。「10ドル掛けてもいい」と。この言葉がキーワードでした。ここで回想シーン・・・遡ること10年前、アビーが学生時代彼の講義を受けていた頃、彼女は勉強についていけなくなり医師になることをあきらめかけます。そんな彼女に彼は励ましを与え、彼女のために補習も行うことにします。そのときの彼の言葉が、「君なら必ずやり遂げることができる。10ドル掛けてもいい。」でした。このキーワードが彼の心に響いたのでしょう。「大した医師になったもんだ」と呟きながら彼は治療を受けるべく病院へ戻ります。年取るとこんなんに弱いですね。アビーの訴えかけるような眼がとても印象的です。ドラマとして無茶苦茶よくできてるなーと感心します。回想シーンで生化学の授業風景が出てくるのですが、学生時代を思い出し懐かしくなりました。医学部では基礎医学と臨床医学のどちらも学びます。おそらく一般の人には医学といえば臨床医学(内科や外科や産婦人科等々)しか思い浮かばないと思いますが、解剖学、組織学、生理学、生化学など生命としての人間の構造や機能を探求する基礎的な学問を基礎医学といいます。中でも生化学は生命を分子レベルで解明する学問で、「生命の神秘」に最も近い分野です。基礎医学と臨床医学とでは教授の持つ雰囲気がずいぶん違います。基礎医学の教授は、生命の神秘の魅力に取り憑かれてしまったような人が多く、根っからの学究派という感じですね。理科少年がそのまま大人になったというか。だから授業も学生に対して熱っぽく語りかける傾向があり、学生もその世界に引き込まれます。ERでもそのへんの雰囲気をよく捉えていたと思います。それに比べると、臨床医学の教授はずいぶん俗っぽく見えたものです。なんちゅうか脂ぎってるというか、世間ズレしてるというか。やはり臨床医学の教授は、関連病院の人事権、以前問題になった博士号に伴う礼金、製薬会社とのつながりな等々、いろんな利権のまっただ中にいるからでしょうね。まあ、ある意味それはそれでおもろいんですけどね。それとこのドラマで驚いたのは、パソコンを利用した障害者用意思伝達装置です。全身の筋肉を動かすことができない人にとってはものすごい助けとなる装置です。おそらくわずかの顔の筋肉の動きや視線の動きをキャッチしているのだろうと思いますが、それで本人の言いたいことを音声にしてくれるようです。おそらく物理学者のホーキング博士が使用しているのもこういった装置なのでしょうね。テクノロジーの進歩が最も活かされるべきなのはこういった分野だろうなーと思いました。