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カテゴリ:『子狐と子狸』
カレーライスの日 -その1- /子狐(ベティ)と子狸(文福)
「まいった…。くそっ…。おいらとしたことがこんなはずじゃなかったってのに…。 いや、いい。どうせこいつと二人でいるとろくな目に遭わねぇ…。」 前を歩く少年がブツブツ言ってる。普段からやたら独り言が多いのは彼の癖だ。 とりわけ今日はご機嫌斜めらしい。今日も…かな? 「ねぇ、文福? ますたぁーが言ってたヨ。カレーには絶対これが必要だっテ。」 私はそう言ってレジ袋の中からビニールで包装されたそれを取り出し満足げに笑った。 「へへへ…、美味しそう(はあと)。あとこれも…。」 「はぁ? おいらがアメリカ生まれだって馬鹿にしてるだろ! いーや、絶対にしている! これでもうちの姐(あね)さんはな、超がつくほどの日本マニアなんだぜ。 このへんにいる日本人なんかよりよっぽど日本人なんだ。そんな姐さん一の子分である おいらがそんな事を知らねえとでも思ってんのか?」 彼は立ち止まって振り返り、私の手にしたものを指差した。 「あれ?キャシーはアメリカ人だヨ、文福。それに文福はたぬき…。」 彼の間違いを正してあげる。 キャシーは金髪碧眼のどこからどう見てもアメリカ人で国籍だってアメリカだ。 「あらいぐまだ!! たぬきじゃねぇー!!!! ていうか、そうじゃないだろ! おいらが言ってるのはカレーライスの具材の事だ。」 そうだった。彼はアライグマだ。ついつい彼本来の姿を想像するとたぬきに見えてしまう。 一応、今は人化して少年の姿を保っているけどね。 「グ・ザ・い…? このちくわのこト? 厚揚げのこト?」 ビニール袋の中で揺れる白い食材。なんだか家に帰るのが待ち遠しい。 「両方だ!!」 「ますたぁーはちくわは美味しいって言ってたヨ。それに厚揚げとコンニャク、ゆで卵モ。」 今日は買ってないけど(文福に無理矢理止められた)ごぼ天とか、がんもどきやもち巾着なんかも魅力的だ。 「くぅーっ、それじゃあ、おでんだろーが! お前のマスターは日本人のくせになんかいろいろ間違ってる! いや、日本人として食文化があさっての方角だ。ありえねぇっつううの!」 「でもりんごと蜂蜜も入れるヨ。これはいいノ?」 「当たり前だ! それこそ正しいカレーの王道だ。 味がカンゲキになるって姐さんも言ってたからな。」 …to be continue. お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011/09/10 02:57:38 AM
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