世にも恐ろしい・・
「・・・!!! そ、それは!!!!!!」自分の目を疑った。そんなことがあってはならないからだ。まだ、朝日が昇る前だから薄暗すぎてよく見えないのかもしれないがこれが本当だったら周りはパニックになるだろう。そして、周りの者達は日焼けとはまた違う、ホコリや汗で何層にも重なった様な黒光りした肌と爪と指の間がいつも真っ黒に汚れている笑うと黒々の歯が見える店主のおやじに飛び掛り、多分、こう言うのだ。「別のをくれ」と。そして、私は考えた。騒ぎにならないよう、ここは一まず冷静な対応をしなくちゃ、って。でも、冷静な対処をする以上に急速に伝えなければならないのだ。そう、ヤツが食べちゃう前に。私は向かいに座って美味しそうに乞食のようなおやじが作った「猪パ(豚肉ステーキ)公仔麺(インスタントラーメン)」と汚い手の乞食のようなおやじが塗ったマーガリン付きトーストをパクつく旦那・豊の食べ終わるのを待っている間にそう考えていた。もしかしたら、私の間違った発言で豊は不愉快になるかもしれないし怒るかもしれない。だが、やはりここは早く伝えなくては、と思い、曖昧ながらに伝えたのだ。そう、豊がまさにそれを口に入れた瞬間に。「その、猪パのゴマ和えの様に(無数にあるという意)付いている黒いのって・・・・もしかして・・・・(死んでる)ハエだよね?!・・」豊は(あまりのショックで)しばらく固まったまま静かに箸を置き勘定を済ませて席をたった。豊はその後具合悪くもならなかったので私の助言により「ハエを食べちゃった!」とならずに済んだかもしれないが豊は二度とこの店に行くことはなくなり後にこの麺屋もなくなった。*これはもう何年も前の話である。