カテゴリ:中国の日本企業・日本人
個人で起業して中国ビジネスを進めている日本人には、何らかのキッカケがあるはずです。中国が好きだとか、中国のほうが働きやすいとか、中国に人脈や金脈があるとか。或いは日本が好きではないとか、日本は住みにくいとか働きにくいとか。
いっぽう大企業の駐在員として中国に赴任している日本人には、おおきなキッカケが無い場合が多いようです。もちろん"志願"して、やっとの思いで中国に赴任できたビジネスマンも多いのですが、組織の上に行けば行くほど、"通過点"として中国に駐在している方が多くなるようです。 私はどちらかと言うと後者に属するほうだったのですが、7年も8年も北京にい続けると、少しずつ中国が把握できてくるわけで、日本とは異なる"システム"に馴染んできました。日本では当たり前に"可能"なのに、中国では簡単にはいかないようなことがあること、そして何故日本のように簡単にはいかないか、と言うことを随分把握できるようになりました。 たとえば「月次決算」や「発生主義計上」が簡単に行かないのは、突き詰めていけば中国の会計システムが"発票"(公的領収書)の授受に拘っているからですし、「売掛金」が多い分「買掛金」も多くなると言う会計責任者の伝統的な"防御策"に基づくからです。 五つ星ホテルのトイレですら、"温水"と"冷水"の蛇口が反対のままだったりするのは、工事をした人、それを管理した人、ホテルの施設管理者、さらには多くのお客さんまでが、そのことに大きな拘りを持たないからです。 極端な話、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」が自然に出てこないレジのオバサンがつり銭をホイとぶん投げているのは、そういうスーパーでもまだお客さんが呼び込めるからです。 日本との違いには、それなりの理由が存在しています。 もちろん、国際化に曝される中で「国際会計基準」の徹底を求められていますし、サービスの行き届いた日系スーパーが躍進すればローカル系スーパーの態度も変わります(でも蛇口は欧米あたりでも、反対になってたりしてるからなぁ...)。ハード面での急成長に対して、ソフト面での変革のスピードが追いついていない、くらいの状況でしょう。 中国に長く生活して働いていると、なぜ日本のように行かないか、と言う"理由"が見えてきます。 "理由"が分かれば対応策も立てやすいわけですが、当然より多くの手間、時間、コストが必要になります。日本からのリクエストは、それが中国でのことであっても"ジャパニーズ・スタンダード"。日本のように行かないと満足してもらえません。手間、時間、コストをかけずに遂行しろ、と言われてもそれは難しいリクエストです。 そんなときについ口にしてしまうのが「中国ではそうできないのです」「日本とは違うんです」「中国の場合、こうなんです」という類の"言い訳"。 でもこうした言葉を、日本の本社や日本の取引先の方に発した途端、"異端児"扱いされてしまう場合がありますので、要注意です。 中国の事情を理解しているつもりで日本にいらっしゃる方に発したその言葉は、多くの場合マイナス効果を生んでしまいます。「中国人に言われるのならまだ納得できるけど、日本人に言われるとは思ってもいなかった。」とか「それを何とかするのが、あなたの役目では無いですか。」などなど、まるで自分が中国の肩を持っているかのように批難される危険性が高いのです。 駐在員の場合は、こうしたプロセスを経て、日本本社派か中国現法派に分れていきます。つまり、日本の本社の"言い分"を支持して「中国はダメだダメだ」と嘆きつつ、現地スタッフなどに無理難題を丸投げするタイプと、"中国のよき理解者"として「日本の本社はダメだダメだ。何も分かってくれない」と嘆くタイプです。 前者の場合、何年か我慢すれば会社人生をうまく切り抜けられる可能性が高いので、中国駐在を”通過点"として割り切ってしまうことになるでしょう。いっぽう後者の場合は、日本の本社との溝が徐々に深まり、中国かぶれの"異端児”扱いされるようになり、会社人生が危うくなってしまいます。そうした方の一部は、大企業を辞めて自ら起業したりします。そして、”中国では"成功されてらっしゃる方も多いようです。中国ビジネスの専門家が、大企業よりむしろ中小企業や個人に多いのも、こうした事情があるのかもしれません。 ビジネスにおける日本と中国との"溝"、しかも日本人同士の。これをどう埋めていくかは難しい課題です。抽象的な答えになりますが「相互理解の姿勢」でしかないと思います。少なくとも中国駐在の日本人ビジネスマンの多くは、日本のシステムを把握している上で中国で働いているわけですから、日本の本社側がいっそう"中国の事情"を理解する姿勢で臨まなければ"溝"はなかなか埋まりません。本社側で中国現地法人のカウンターパートナーとなっていらっしゃる方々は、レポートや数字や日本で入手できる情報だけで判断するのではなく、頻繁に現場を訪れるべきですし、現地の駐在員やローカル・スタッフなどといろいろ語り合うべきでしょう。北京に出張にいらっしゃっても、カラオケやスナックのハシゴをされるだけでは、日本人社員同士の理解は深まりません。 現地にいる日本人の身勝手な言い分かもしれませんが...... お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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