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北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

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2006.02.06
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懇意にしていた日本の大手メーカーの中国現地法人の日本人総経理(社長)が突然帰任することになりました。
その現地法人は日本側の出資比率が過半数を占め、名実とも日本メーカーの子会社なのですが、外資規制などいくつかの理由があり、中国の国有企業との合弁会社になっています。年に1回開催される"董事会"(日本で言うと"取締役会"と"株主総会"を兼ねたようなもの)で、中国側"董事"(日本で言うと"取締役"のようなもの)から、"総経理解任動議"が提出されたようです。出資比率同様、董事会においても日本側がマジョリティーを占めていますから、その場で否決されてしまうのが本来の姿であるはずなのに、日本側董事(つまりは日本の親会社のトップたち)が本国に持ち帰ってから検討するということになり、結果として日本側も総経理の解任に同意してしまいました。
つまり、この日本人総経理は出身元の日本の本社からはしごを外された格好になってしまったのです。

この総経理が、業績を上げられなかったのか、或いは業務怠慢だったのか、というと、私のみたところ、決してそうではありません。プレイング・マネージャーとして土日を惜しまず仕事をこなし、業績を向上させていました。まぁ、私にしてみれば、そのことが"アダ"になってしまったのではないかと分析していますが.....

その会社は、日本の国際的ブランドの製品を中国でも製造販売するため設立されました。
製造管理もマーケティングやセールスも日本側に任せる、という合弁条件を中国側が受諾し、総経理(社長)も日本側が本社から送り込むことになりました。中国側の合弁相手は、地方政府機関がお膳立てした"お見合い"で半ば強引に結び付けられた国有企業。広い意味で同業種ではありますが、業績もパッとせず、製造ノウハウはもちろん、中国市場におけるマーケティングやセールスのインフラもあまりあてにはできないような企業にみえました。
そうした状況を目の当たりにしたその日本人総経理は、既に海外において市場開拓経験のある方でしたので、中国側合弁相手に頼らないマーケティングやセールスの体制を築いていきました。

中国側合弁相手から派遣されている副総経理(副社長)には、ほとんど何も相談せず、独断で進めてきたことは、当然のことながら"ワンマン経営"に見えたでしょう。けれども市場参入から3年、売上も市場シェアも順調に伸ばすことができたのです。
その会社が製造販売する製品の市場でのプレゼンスが大きくなり、
事業規模が拡大すれば、"利権"が生まれてきます。例えば、資材や原材料の調達にしても、立ち上げの頃は良い取引条件を引き出すために数多くのアウトソーシング先を訪ねてギリギリの交渉でコストダウンをしなければならなかったのですが、事業が順調に拡大していけば新規取引を狙った様々な会社から頻繁に"売り込み"が来るようになります。あちこちを飛び回って不在がちの日本人総経理ではなく、閑職の中国側副総経理のほうに"売り込み"が集中することは容易に想像できます。
発注者としての権限を持つこと、イコール"権益"を握ることですから、そうした"権益"を中国側合弁相手が奪還しようと考えるのも良くある話です。

中国側合弁相手は、董事会で日本人総経理解任の理由について、ワンマン経営を第一に挙げたそうです。合弁会社であるのに中国側から派遣されている幹部には何も相談せず、すべて独断で行っている。権限が集中して、取引先との関係が不透明だ。そして、中国のことは中国に居る者が関わるべきだ。
最後の「中国のことは中国に居る者が関わるべきだ」については、私がこのブログの中でも常々主張していることではありますが、立ち上げで苦労しているときに傍観していた中国側の方たちに主張されては、違和感を覚えてしまいます。

さて多くの日系合弁会社と同様、この会社の日本側董事は総経理を除き、日本本社の社長や海外事業担当役員など重役が名を連ねています。中国側董事も出資元企業のトップや重役が就任するのが一般的で、そうしたう方の中には政府機関や共産党の幹部役職を兼務しているケースが多いのです。日本側董事すなわち本社の重役たちは、中国側董事のこうした"肩書き"に過剰な期待を持つことが多いわけです。
また、表向きであっても合弁事業が円滑に進められているときの董事会は、年に一回の"日中友好宴会"みたいな感じになりがちです。董事会そのものは、一般的な日本の株主総会の如く「異議無し」の連発で恙無く終了し、その後食事会みたいなものが用意されていて、お互いが相手先を喜ばせるような趣向を凝らしたりします。
日本側董事は年1回の董事会の折に、中国側合弁相手のVIPに"骨抜き"にされることになります。「もっと中国側のリソースを活用できるはずだ」「現地の総経理が報告を上げてくることと違う印象を持った」などなど....多くの中国人は接待上手ですから、たまにしか会わない日本側トップに、中国側を胡散臭いなんて思わせる隙すら与えないはずです。現地を任されている部下の日常の苦労話などどこ吹く風のように消え去り、中国側合弁相手への信頼感のほうが増してしまうことすらあるわけです。

そんな董事会でいきなり提出された"解任動議"。さすがに日本側トップは、その場で受諾することは避けましたが、結果的には受け入れてしまったのです。
その総経理がワンマンだったのは事実だと思いますが、理由は明確ですし、最初の2年間は中国側も面倒な責任と仕事を押し付けられず喜んでいたフシすらあるのです。日本の本社は、現地で苦労してきたその総経理=自社社員の"言い分"などよりも、あまり役には立たないはずの"大切な"中国側パートナーの意見のほうを選択してしまったわけです。
後任の総経理も日本から送り込まれてくるのですが、権限は大幅に削がれるようになるでしょう。

「現地化」とよく言われます。マネージメントを現地人にするのも現地化の一つだと思いますが、根本理念は(日本人であろうが現地人であろうが)「現地を預かっている責任者を信頼する」と言うことではないかと思います。もちろん内部統制上、本社の関与は必要ではありますが、可能な限り「現地判断を尊重する」ことこそが「現地化」のファースト・ステップだと思います。
重要案件が最終的に日本本社の判断となることは致し方ないにせよ、年1回程度の中国側パートナーの"心地よい応対"に惑わされて、モノゴトの全体像を把握できないような日本の重役の方が決めてしまうのは、どうかと思ってしまいます。

多くの中国人は、プロコトルの使い方に秀でています。七夕みたいなお付き合いしかなくとも、”非公式の場"では日本側トップ(決定権者)の好評価を獲得します。そして董事会での解任動議のように"公式の場"の権威性を巧みに利用します。普段日本にいらっしゃるトップや重役の方の多くが、そのワナにハマってしまい、"ビジネス"よりも"友好"のほうに傾いてしまいます。
なんだか、日本の外交にも似ているような気がしますが.....





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Last updated  2006.02.06 20:14:38
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