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パソコン、ふんぱつしてThink-PadのZ60mに換えました。いままではThink-PadのR50pでした。"IBM"ユーザーだったのです。その前はソニーのVAIOのGRX90のユーザーでした。そういえば、90年代は鈴木亜久里が広告に出ていた東芝のDyna Bookを使っていました。
節操が無いのですが、私のノートPCへのロイヤルティは、東芝 --> ソニー --> "IBM"という変遷をたどっていったのです。先日買い換えたノートブックのブランドは"IBM"と自分では思っているのですが、マニュアルも保証書も"LENOVO"(聯想)のThink Padではあります.... 2000年代初頭、中国におけるノートPCのマーケット・シェアのトップは<東芝>でした。もちろん、いまよりもマーケット・スケールはとても小さかったのですが、それなりのプレゼンスがあったのです。そのころには既に、<聯想(当時は"Legend"という英語のブランド名でした)>というパソコン関係の組み立て・製造会社があって、<東芝>のDyna Bookは主にその<聯想>の関連会社<神州デジタル>のリテーラー・ネットワークを通じて販売されていました。 ところが、2000年春にいわゆる「東芝ノートパソコン事件」が起きました。記憶装置にデータが失われる危険性のある不具合が見つかり、アメリカでユーザーの集団訴訟が起きました。アメリカのユーザーには多額の和解金を払うことで和解しました。同じ不具合を持つノートパソコンは中国でも販売されていましたが、中国のユーザーには和解金を払わず不親切な英文マニュアルの修正ソフトを無料配布する、と言う対応を行ったのです。 「アメリカと中国で対応が違うのは"差別だ」とユーザー(や野次馬)が怒り出し、メディアも厳しく非難するようになると、ようやく日本から北京に副社長を遣わし、記者会見で事情説明を行ったのです。ところが、この記者会見が裏目に出てしまい、中国のメディアやユーザーの憤怒の火に油を注ぐような結果になってしまいました。 この"事件"がマーケット・シェアの落ち込みにどの程度影響したのかは定かではありませんが、一時的であるにせよ<東芝>のブランド・イメージが傷ついたのは確かでしょう。 私がむしろ注目したいのは、文彬という方が「東芝は中国で何を間違えたのか」で指摘している"東芝はテキサスでの訴訟和解を中国総代理店には情報を交換したが、ホームページによる無料修正ソフト(Software Patch)を配付する以外、ユーザーへの直接の説明は何もしかった。"というところです。ここで言う「中国総代理店」は<聯想(いまのLENOVO)>の関連会社<神州デジタル>のことです。きっとユーザーサポートに関する役割分担や責任が、<東芝>と<神州デジタル>の間で明確になっていなかったのでは無かったでしょうか? 結果としてこの事件以降(或いはこの事件の前から関係が良くなかったのかもしれませんが)、<東芝>と<神州デジタル>の関係は悪化していきます(2003年には「不仲説否定」:Searchina 2003年11月09日の記事)。 この間に、<神州デジタル>は中国最大のITサプライヤーに成長し、<連想(LENOVO)>はIBMのPC部門を呑み込んでしまい、オリンピックのTOP(グローバル)スポンサーにまで成り上がりました。片や中国における<東芝>のノートパソコンのマーケット・シェアは急下降して行ったのです(Searchina 2004年06月26日の記事)。 <神州デジタル(Digital China)>(いまは<聯想(LENOVO)>から独立しています)、その実質的な親会社だった<聯想(LENOVO)>は90年代後半、中国で人気だった<東芝>のノートパソコンを独占的に販売することによって成長してきた側面もあるのですが、いまでは少なくとも中国のIT領域において<東芝>よりプレゼンスが高くなった、と言うお話でした。 以前エントリーしたことのある<愛国者(aigo)>という中国のITブランドにも、似たような雰囲気を感じてしまいます。 <愛国者(aigo)>というブランドは、北京の<華旗資訊>という会社が自社開発した製品につけたものです。昨年の「抗日戦勝記念日」に合わせて「V815+」(VはVictoryですよ!!)という型番名のデジカメを発売して、一躍有名ブランドになりましたが、もともと<華旗資訊>も<神州デジタル(Digital China)>と同じような外国ブランドIT製品のディーラーなのです。 特に<ソニー>との関係が強く、2000年代初頭には<ソニー>のデジカメやムービーカム、その後ノートパソコンVAIOの販売で儲けたのではないかと推測します。いまでも北京のソニー専売店の多くが<華旗資訊>の子会社のリテーラーであることは、領収書をもらえば分かります。 <ソニー>を中心に日本や海外のIT製品を中国で販売してきた<華旗資訊>は、自社ブランド<愛国者(aigo)>を創り上げ、デジカメやMP3プレイヤーなどでプレゼンスを高めているのです。 <神州デジタル(Digital China)>=<聯想(LENOVO)>、<華旗資訊>=<愛国者(aigo)>は、それぞれ<東芝>や<ソニー>を中心とした外国ブランドのIT製品の代理販売を通じて、製品の技術やITマーケットを熟知していき、いまや中国では<東芝>や<ソニー>を越える(或いは脅かす)存在になってしまったと言うことです。 前述の通り<東芝>の場合、中国の販売総代理店であった<神州デジタル>との関係が昔から何となくしっくり行っていなかったのではないか、と思えるフシがあります。2000年に発生した「東芝ノートパソコン事件」こそ、その象徴たるできごとであり、"分水嶺"だったように思えるのです。 一方<ソニー>は現在でも<華旗資訊>=<愛国者(aigo)>との共存を模索しているように思えます。前述の通り、<華旗資訊>の子会社が相変わらず<ソニー>の専売店を多面展開していますし、いまのところ最も競合するデジカメに関しても、<愛国者>のラインナップの中心は実売1,000RMB台で、2,000RMB以上が中心の<ソニー>と購買層が重ならない状況になっています。 片や「中国人のブランド」を強調する「愛国ブランド」、片や品質問題で不合格を喰らう<ソニー>ということで、胡散臭い想像もできそうですが.... ※この話題、とある日中のコミュニケーションの研究者との酒飲み話からインスピレーションされました。W先生、ありがとうございました.... お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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