カテゴリ:ブランディング・マーケティング
日本のテレビCMは15秒が基本になっています。番組の中で放送CMは30秒が多いのですが、番組と番組の間に放送される"スポット"と呼ばれるCMはほとんどが15秒です。放送時間帯に柔軟性のある"スポット"のほうが回数も多くなり易いので、CMのクリエイターは15秒を基本にアイディアを考えることが多いのです。
中国では15秒CMは日本ほど多くありません。5秒、15秒、30秒、60秒といろんな長さのテレビCMが放送されています。特に5秒や30秒のCMが日本と比較すると多く放送されています。ゴールデンタイムでも放送される欧米系のブランドを中心にした60秒CMは見応えがありますが、ブランドや企業の名前を叫ぶだけの5秒CMが立て続けに何本も続くと、ウンザリしちゃいます。 だからなのでしょうか? なんと、中国中央電視台(CCTV)が、7.5秒のテレビCMを導入することになったです。60秒(1分)を半分にして30秒、また半分にして15秒、それをまた半分にして7.5秒と言うわけです....。はたまた、15秒を3等分してセールスするより、半分にしたほうが手間がかからないのでしょうか?儲かるからでしょうか? 7.5秒のCMを採用するのは、CCTV-1チャンネルで毎日午後7時から放送されるニュース番組『新聞聯播』の直後の広告枠で、レギュラーのテレビCM枠としては中国で最も高い時間帯です。この広告枠には"定価"が設定されておらず、11月18日にオークションが開かれ、最も高い金額で入札した企業が放送する権利を獲得すると言う仕組みです(厳密には、曜日や期間、CM枠内での放送順など、様々なパラメータが加わって競札にかけられるのですが)。 CCTVのウエブサイトではこの7.5秒CMを"自画自賛"して売り込みに賢明なご様子です。 『7.5秒テレビCMは、中国のテレビ広告のレギュラー・フォーマットになるだろう!!』 7.5秒テレビ広告枠は、市場環境、広告主の需要、さらに視聴者も含め、広範囲にフィージビリティ・スタディを行った結果、誕生したのです。7.5秒テレビCMこそ、中国のテレビ広告のレギュラー・フォーマットとなり、テレビ広告の歴史に新たな1ページを刻むことになるでしょう。『7.5秒:ブランド時代のテレビ広告のフォーマット』 5秒のテレビスポットは、中国のテレビ広告の中において、ブランディングの補完という重要な役割を演じてきました。しかし、メディア環境が変化し、情報の量的激増と分散化が進む中で、広告メッセージ伝達の最適化を目指した場合、5秒スポットは7.5秒に取って代わられるでしょう。7.5秒スポットこそ、広告フォーマットの多様化に拍車をかけるのです!!CCTVはテレビ局なので、テレビ以外のメディアと併用しましょうなんて言えないとは思いますが、インターネット経由で、より詳細な情報やメッセージを獲得したり、ブランドの擬似体験が可能になった現在の環境において、テレビ広告の果たす役割も変化しています。オーディエンスの細分化が苦手なテレビ広告を"メッセージのばら撒き役"として機能させるとするなら、頻度(広告の放送回数)を稼ぐことが必要でしょう。広くばら撒くコミュニケーションですから、ほんとうに届いて欲しいオーディエンスに的中させるためには、頻度が必要なのです。いっぽう、インターネットではテレビよりも深いコミュニケーションが可能ですし、コストも安くつくはずなので、メッセージ量やコミュニケーションの深さは、インターネットに任せてしまえば良いわけです。こうしたメディア・ミックスにおいて、コストパフォーマンスを考慮すれば、15秒や30秒のテレビ広告ではなくて、5秒とか7.5秒といった短時間のテレビ広告でも構わないはずです。 つまり、オーディエンスのアテンションを引くようなキーワードを埋め込んだ5秒や7.5秒のテレビ広告で頻繁に放送し、そのキーワードに関心を持ったオーディエンスがググるなどしてインターネットでより多くのメッセージを得ると手法ならば、30秒CMを1回やるより、15秒CMを2回やるより、7.5秒CMを4回或いは5秒CMを6回放送したほうが、パフォーマンスに優れているはずです。 でも、それだったら5秒CMでいいんじゃないの?わざわざ7.5秒の広告枠なんか設けなくとも....。と言う疑問に対しても、一応CCTVは答えています。 『7.5秒テレビスポットは、パフォーマンスが優れている!!』 最新の脳神経化学の研究によると、記憶すべき事象が発生して7~8秒後に、大脳の血流と酸素量のシグナルは最大限に上昇します。また北京師範大学心理学院の研究者によると、最良の広告効果を得られる最短時間は7~8秒とのこと。短期的な記憶に留めるべき事象は、発生と同時に忘却が開始されますが、6~9秒あたりからは安定していきます。CCTVのサイトでは、血流と酸素量や忘却曲線のグラフまで持ち出して、5秒スポットよりも7.5秒スポットのほうが効果的であることを主張しています。 広告効果や効率については様々な数値や指標で測れるようになりました。テレビ広告では視聴率や放送回数をパフォーマンスの指標としてプランニングや事後評価に利用します。ところが、CMの秒数(長さ)と効果や効率の関係にはいまだに定説が存在せず、広告料金と直接関係する要素でありながら、科学的な分析と議論を避ける傾向にすらありました。この問題を単純化するなら、「30秒CMは15秒CMの2倍効果があるか?」ということです。これは新聞広告などにも言えるわけで、例えば全頁広告が全5段(1/3頁)広告の3倍以上の効果があるのか定説がありません。広告効果と広告料金が合理的に符合しなければ納得してもらえない現在の広告環境において、媒体社や広告会社にとって不都合な議論でもあるからです。 この場合、7.5秒スポットの効果が5秒スポットの1.5倍以上で、料金が1.5倍未満であるなら、広告主にとってパフォーマンスが優れている、と言えるのでしょうが、実証するのが難しいでしょう。そもそも、テレビCMの効果は秒数よりもクリエイティブにより依存する、と言われたりするわけで、クリエイターのご意見も参考にしなければなりません。というわけで、欧米系広告プロダクションのクリエイティブ・ディレクターが7.5秒広告を一応賞賛する意見をCCTVのサイトに寄稿しています。タイトルの『ほんとに不思議な7.5秒』というタイトルには、戸惑いの様子も感じますけど....。 私たちクリエイターにとって60秒が理想的な長さで、30秒は標準的、15秒が何とか受け容れられる長さで、5秒だと感動をクリエイトすることはできません。でもテレビCMの短時間化とローコスト化は時代の流れでもあり、最近のカンヌ(広告フェスティバル)でゴールド(金賞)を獲得したテレビCMの大部分が短尺(15秒)の作品になっています。例えば、北京オリンピックのスポンサーである『青島ビール』が、アーチェリー、陸上競技、バスケットの3種目を使って20秒のテレビCMを用意するくらいなら、「酔う」という一語にメッセージを集約させて7.5秒のCMにしたほうがインパクトが強まるかも知れません。 確かに5秒だと、企業名かブランド名か商品名のいずれかと、タグライン(企業やブランドの端的な説明文)くらいしか入りませんが、7.5秒だとちょっとした工夫ができそうな感じがします。いま流行りの広告主サイト誘導型のテレビCMにも効果的に利用できるかもしれません。 そして、何よりもロゴのCGと企業名かブランド名だけの耳障りな5秒CMが中国のテレビから減ると言うことは、オーディエンスにとって歓迎すべきことかもしれません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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