カテゴリ:中国の日本企業・日本人
私はいわゆる"大手広告代理店"で長い間働き、この約9年間、中国・北京の現地法人の経営管理者をしていました。
思うところがあって、この2月、デジタル・マーケティングなどを展開する"今風な"日本の会社に転職し、中国を中心とするアジアの事業展開を担当することになりました。 いま取り組んでいるのは、中国におけるネット広告事業の立ち上げ。事業の立ち上げと言っても、スピード感を重視する"今風"の会社では、当然のことながら、既にうまく行っている、或いはこれからきっとうまく行きそうな会社への出資やM&Aと言う手法が優先されるわけです。 1997年、私が北京に赴任したとき、現地法人は合弁会社として立ち上がったばかりでした。事業が軌道に乗るまで5年ほどかかり、私が帰任すると事業方針が見直しされることになりました。10年前に逆戻り、といった感じでしょう。 新しい会社ではまず、ローカルの大手ネット広告会社に出資し、様子を見ながら出資比率を引き上げて子会社化し、最終的にはIPOを目指す、と言うストーリーを描いています。3年後の数値目標が明確に決められているにです。 日本では、ネット系広告会社に対し、総合的な(オールドファッションな)広告会社を"リアル系"などと呼ぶことがあります。 取り扱うメディアがネット上の"バーチャル"でものではなく、テレビや新聞・雑誌など"リアル"なもの中心だからでしょうが、幾ばくかのレスペクトを込めた言い方でもあり、その背景には電通に代表されるオールドファッションな広告会社が日本そのものを動かしている、と言う畏怖の念すらあるように思えます。 いっぽう、中国では(欧米でも以前はそうであったように)総合的な(オールドファッションな)広告会社を"トラディッショナル"つまり"伝統的"といいます。 中国や欧米ではネット系のメディアはテレビや新聞、雑誌などの"リアル系"メディアとほぼ横並びに捉えられており、単純に出自の順序から既存メディアを"トラディッショナル"と読んでいるに過ぎないのです。現に欧米のエージェンシー(広告会社)内部には、"リアル"と"バーチャル"のメディアに競争関係は原則として存在しないのです。これに対して、日本では"バーチャル"は"リアル"の下請け的ポジションに置かれている状況なのです。 私としては、"リアル"とか"バーチャル"という区別に意味を感じず、最新のデジタル・テクノロジーを有効活用したマーケティング・サービスが目指せれば良いと考えているので、新聞やテレビの広告扱いから始まった日本の広告会社を"オールドファッション"、インターネットなどデジタル・テクノロジーの利用から始まった日本の広告会社(マーケティング・サービス会社)を"今風"と呼ぶことにしています。 当然、様々な違いに驚かされるのですが、中国でのビジネス展開についても、考え方が大きく異なっています。 日本の"オールドファッションな"広告会社と"今風な"広告会社の中国展開への取り組み方の違いを、私風に列挙してみたいと思います。 "オールドファッションな"広告会社 ・政府系コネの力に過信 ・売上規模重視 ・現地法人の単体業績重視 ・日本のクライアントの受け皿機能を重視 ・本社からの経営陣の送り込み ・本社からの直接投資が基本 ・本社からのサポート費用に原価意識が欠如 ・単独展開(日本本社のブランドに依存) ・年寄りが多い(中国関連部門で私が一番年下でした!!) "今風な"広告会社 ・投資先の経営者(創業者)の能力に期待 ・最終利益重視 ・本社連結決算への影響重視 ・中国でのクライアント・リソースのマルチ展開を目指す ・現地経営陣の温存 ・タクスヘブンに合弁会社を設立し、間接的に投資(将来のIPOや売却を想定) ・本社からのサポート費用は現地法人の原価として明確に計上 ・マルチ展開(複数の現地企業に投資) ・若い(海外関連部門で私が一番年寄りになりましたぁ....) ほかにも挙げるとキリが無いのですが、どちらが良い方法なのかは、いまのところ判断できません。 "オールドファッションな"会社は、会社としての判断が下るまで時間がかかり、"今風な"会社は速い、などとよく言われますが、これは会社の規模や組織づくりの違いに拠るところが多いのではないでしょうか? ただ、"今風な"会社は経営層から平社員までコスト意識が徹底されている感じがします。海外出張のとき、"オールドファッションな"会社では若造社員が平気でビジネス・クラスを使っていたりしましたが、"今風な"会社では経営者でも格安チケットを使ったりしています。もちろん、この状況は会社によって異なると思いますが、投資先企業に利益改善の指導を行う立場の会社として、当然の態度だとも言えるでしょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.03.18 00:16:15
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