モバイル・ビズの皆さん、ケータイ・ユーザー4億人を過信しないほうが....
中国ではケータイ・ユーザーが4億人を越えました。日本の5倍ってところでしょうか。それもあって、モバイル・ビジネス先進国の日本の企業は、中国での展開に積極的です。確かに日本ではこの4~5年でケータイで何でもできるようになり、モバイル系のサービス/コンテンツ・プロバイダーが急成長しました。でも最近は日本国内が頭打ちになりそうなので、中国で頑張ろうと言う感じもあるでしょう。実は既に中国でもケータイで日本とほぼ同じようなことができちゃいます(お財布ケータイはまだですが)。ただ利用状況はというと、SMS(ショートメールサービス)やポータル・サイト(一部"勝手サイト")による情報提供サービス以外は、あまりパッとしません。日本の業界の方は良く、中国には「優れたコンテンツやサービスが無いから利用者が増えない」とおっしゃいます。でも「利用者が増えないから、優れたコンテンツやサービスが出現しない。」という側面も検討しなければなりません。まず4億人のケータイ・ユーザーはどんな人たちで構成されているのか、冷静に考えてみる必要があります(まぁ、きちんと考えている日本企業もありますが)。中国のユーザーARPU(1ヶ月あたりの通信・通話料金としときましょ)は、平均すると100RMB(約1,500円)に届きません。日本ではここ最近APRUが下がる傾向にあるようですが、それでも平均8,000円くらいでしょうか(日本のケータイ料金が世界的にみて、べらぼうに高いせいもあります)。ただ特に中国ではこの種のデータの「平均」ほど意味の無い数字はありません。中国のユーザーの8割は100RMB未満です。つまり、ケータイに月100RMB(約1,500円)以上お金を使える中国のユーザーは、日本のケータイ・ユーザー全体と同じ、つまり8,000万人くらいになります。しかも彼らが月8,000円くらい使うかと言うとそうではなく、月500RMB(約7,500円)以上のユーザーは全体の1%程度というデーもあります。中国のケータイの月基本料はキャリアやサービス内容によって異なりますが、だいたい50RMB(約750円)です。市内だと3分通話して1RMB(約15円)程度。1日平均4~5分市内通話をすると月100RMB(約1,500円)になる計算です。通信・通話料金が異常に高い日本にいる方からみれば、安く思えるでしょうが、多くのユーザーはこの月100RMBの出費が限界と言ったところです。プリペイド式ケータイは50RMBの月基本料がかかりません。その分、通信・通話料金の単価は高くなるのですが、月120RMBくらいまでの利用であれば、プリペイド式のほうが長く通信・通話できるという計算になります。中国ではユーザーの6割がプリペイド式ケータイの契約です。ケータイ・ユーザーの中で、比較的恵まれた経済環境にある大学生であっても、躊躇いがちにケータイを利用する人が多いようです。こちらからケータイに電話すると「通話ではなくSMS(ケータイ・メール)で連絡してくれ」などとセコイことを言ってきたりします。中国では音声通話を受ける側も、市内通話と同額程度の料金が課金されますから、電話を受ける側もお金のことを気にしなければなりません。その点、SMS(ケータイ・メール)は受信側は課金されないので、安心のようです。いろいろ調べてみますと、月100RMB以上のお金をケータイに費やすことができるユーザーの大半は、ケータイ費用を会社経費で精算できるビジネスマン(ウーマン)です。つまり現状では、通信費を個人負担しているケータイ・ユーザーのほとんどは、お財布の状態を心配しながら、必要最小限の場合にのみケータイを使っている、と言うことです。日本におけるモバイル・ビジネスの推進役は、女子高生や大学生など20代前半までの若い層でした。写メール、ムービー・メール、着メロ、ゲームなど、実用よりはむしろ"生活に彩り"を添えるサービスから急成長してきたと言えます。それから情報提供サイトやコマース・サイトが出てくるのですが、やはり主役は20代までの若者です。日本ではビジネス向けコンテンツも充実していますが、若者向けの"勝手サイト"のほうが勢いがあります。いまでも、日本の女子高生は月15,000円くらいケータイにお金がかかっていると言います。前述の通り中国でも既に、画像/動画メール、着メロ、ゲーム、"勝手サイト"、コマース・サイトみんなあります。でも利用頻度は決して多くないのです。特に、若者にとってケータイはいまのところ通話とSMS(ケータイ・メール)の道具というイメージが強いのです。前述の経済的事情もありますが、お国柄の違いも見逃せないと思います。(財)日本青少年研究所の調査によると、「大衆文化に非常に興味がある」と答えた高校生が日本では62.1%だったのに中国では35.2%に過ぎません。一方で「携帯電話や携帯メールに非常に興味がある」日本の高校生が50.3%であるのに対し、中国では17%です。他の調査結果もみていただければ分かるのですが、中国の高校生は”生活の彩り"よりも"実用"を重視する現実主義者という感じなのです。これらを整理しますと、中国では若者向けのエンタメ系コンテンツのマーケットは当面過大評価できないのではないかと思います。ポテンシャルが高いのはビジネスマン向けのビジネス・コンテンツと言うことになりそうで、数は少ないお金持ち&会社持ちユーザーに高価値コンテンツを高い料金で提供する方向のほうが、ハズさないように思えます。ただここで課題になるのは、課金や料金回収手段でしょう。このあたり中国は、日本から遅れをとっていますし、キャリアの頭も固いですし、プロバイダーやディストリビューターやユーザーの金払いもちょいと心配と言った感じでしょう。ケータイ・ユーザーの数は4億人からまだまだ増えていきそうですが、ユーザー全体がモバイル・ビジネスのパイになるかと言うと、決してそうではないだろう、というお話でした。