テキサス州の町パリをめざす男。彼は失踪した妻を探し求めていた。男は、4年間置き去りにしていた幼い息子との間にも親子の情を取り戻す。そして、やがて巡り会った妻に、彼は愛するがゆえの苦悩を打ち明ける……。さすらいの監督W・ヴェンダースが、S・シェパードのシナリオを得て、ロード・ムービーの頂点を極めた秀作で、カンヌ国際映画祭グランプリに輝いた。哀感漂うライ・クーダーの音楽に乗せて、ロビー・ミュラーが映し出すテキサスの風景の何と美しくも孤独なことか。主人公に扮するH・D・スタントンも静かな存在感で作品の大きな魅力となっているが、N・キンスキーが生活に疲れた妻を演じて新境地を開拓しているのも興味深い。
映画の30分ほどでようやく話しだすトラヴィスの口から出た言葉は「パリ」。このパリはフランスの街ではなく、テキサスにある町。トラヴィスはその「パリ」の写真を1枚持っているが、それはただの荒野。トラヴィスはその町に行きたがっていたのだろうか、テキサスの荒野をただ1人で黙々と歩いていた。迎えにきた弟と共にロスへ帰り、4年前に別れた息子のハンターと再会する。はじめはギクシャクしていた関係も、次第に打ち解けあっていく。そのへんをじっくりと時間を掛けて描いているのがリアルでいい。互いに道路の反対側を歩いていて、片方が相手のほうに寄って行く、父子の関係が修復された瞬間。
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