Ｂｅｎ’ｓ　Ａｔｔｉｃ　

なかなか手に馴染まない物ってあるよね。
例えば万年筆とか。
中学の入学記念で親戚のおじさんにいい万年筆をもらった。
当時のボクは、あのペン先がうまく使えず、引き出しの隅に眠ったままだった。

このスティーリー・ダンのエイジャがさしずめボクにとっての万年筆かな。

中学生のボクはラジオから流れる小林克也の「ベスト・ヒット・ＵＳＡ」を必死でヒアリングをしながら、最新のアメリカ・チャートにはまっていた。

"This week No,1 is Steely Dan ,Aja."

早速ボクはメモをして、いつもの近所のレコード屋さんに予約に行った。

２ヶ月ほどしてやっと手に入った「エイジャ」に針を落とす。
コジャレた演奏に甲高いヴォーカル、いつまでたっても盛り上がらない展開・・・・
少なくとも、当時のボクにはこの程度にしか伝わらなかった。
それから二回くらい聴いたかな・・・・その後は聴かなくなった。

半年後くらいに、友達の一人がこのアルバムを譲ってほしいと言うので、ボクはあろうことか「エイジャ」を手放してしまった。
そのとき入ったお金で確かジェフ・ベックのワイアードを買ったと記憶している。

大学生になって、軽音楽部の先輩でカッコいいフュージョンを演奏するバンドがあった。
そのバンドの演奏する曲に聞き覚えがあった。
あの「エイジャ」の中の一曲だった。
これ、カッコいいじゃん！

ボクはすぐに貸しレコード屋で借りてきてテープに採った。
さすがにレコードを買いなおすなんて、変なプライド（って言うのかどうか？）が許さなかった。
テープを何度も聴き返すうちに、自分の未熟さに気付かされた。
なぜ、あの時、こんな風に聴こえてこなかったのか。
なぜ、手放してしまったのか・・・・？

このアルバムをＣＤで買いなおすのは、またしばらく後になる。

まだ、未だに万年筆は使えないままだけど、いつか使えるときが来るのだろうか。