シンクロニシティ

ファーストフード店は好きだけれど、メニューを選ぶ瞬間だけは嫌いだ。メニュー選びを楽しみたいのに、その楽しみがすぐに奪われるからだ。

どんなお店でも、メニューを見るのは楽しいものだ。

もしかしたら、
　季節の特別品があるかもしれない。
　（蟹バーガーなんてどこかにない？）

もしかしたら、
　メニューの端の方に気が付いていなかった優れものがあるかもしれない。
　（ココアって、見つけるのにいつも苦労する）

もしかしたら、
　いつもは遠ざけていたけれど、その日の気分では、ちょっとトライしてみようかと思う一品があるかもしれない。
　（ハラペーニョのたくさん入った激辛メニュー！とか）

この楽しみを奪われないように、少し離れたところから店員さんの頭の上にあるメニューをそっと見る。しかし、どんなに気付かれまいとしていても、かならずこう言われる。

　「お客様、どうぞ、こちらにお並びになってください。」

　「メニューはこちらに見やすいのがあります。」(ニコッと笑って)

私はこれが大嫌い。

並んだら最後、今度は「早くしろ早くしろ」プレッシャーを間違いなく浴びるのだ。覚悟を決めてゆっくりと選ぼうとするのは無謀。ついさっきまでのニコニコ笑顔はどんどん作りものになって、体は小刻みに揺れ始め、視線が泳ぎ出す。そうなると、メニュー選びよりも、その店員の態度が気になって、メニューを見る余裕なんてなくなる。まもなく観念して、適当なセットメニューを選ぶのだ。

そして、

商品を受け取って食べる時になって、抹茶ムースのかなんとか、気が付いていなかった美味しそうなメニューを見つけると、こっちの方が良かったと後悔するのだ。


ファーストフード店様、

どうか、メニュー選びだけはゆっくとさせてください。
　さっさと食べて帰りますから。

並ばずにメニューを見ている私を好きにさせてください。
　邪魔にならないように端の方で見ていますから。

出来れば・・・"スローメニュー選びレーン"を用意してもらえませんか？
　きっと、ファーストフード初心者や、どうしてもメニュー選びに時間がかかってしまう人達が、新しいお客になりますから。


(銀行窓口やユニクロのようなフォーク並びはファーストフード店は採用しないと思う。１レジ１レーンはプレッシャーをかけて回転率を良くするためなんだと思うので。だから、スローメニューレーンを用意して欲しいのです。)