テーマ:ショートショート。(573)
カテゴリ:ショートショート。
三丁目のすずきくんは、オトナといわれるお年ごろになっても、なかなか、恋をすることができなかった。 だから、気の長いたちではなかったすずきくんは、世の中ではよくあるようにヒクツになって、 恋というものをうらんじゃった。 そんでもって、世界のありとあらゆる恋を、鯉にしてしまった。 鯉してる人は、鯉のかっこうして、 ヒレをふりふり街をかっぽする。 街じゅう鯉がぴちぴちはねてて、 縁日の金魚すくいみたい。 ハヤリの歌はみんな、鯉のために歌われて、 鯉についてみんな悩み、 鯉焦がして、 「あのぉー、鯉についての相談なんですけどぉ・・・」 って、ラジオの匿名希望さんはもじもじ話す。 焦がしちゃったもんは仕方がないのに。 こっけい、うこっけい。 そんなふうに鯉たちがみちばたでぴちぴちしてるのを 横目で見ながら通りすぎるすずきくんは、 みんな鯉なんかで悩んでどうするんだよー。 人生はもっと有意義に使おうよー。 鯉ばっかの一生で終わりたいわけー。 しししししー。 なぁんて、 笑ってやがった。 ところが、ところが。 しばらくたったある日、 三丁目のすずきくん家のおとなりに、 さよりちゃんて女の子が越してきた。 「こんにちは、となりに引っ越してきたさよりといいます。よろしくお願いします」 ってあいさつされて 目が合ったしゅんかん、 ドッキュン。 すずきくん、鯉になっちゃった。 そんなわけですずきくん、 今は、三丁目の公園の池のなか。 ゆらゆら泳いで顔だして、 さよりちゃんが近くをとおらないかって、 ぷかぷか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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