あるが侭に・・・

土日は死んだように眠っていた。まる二日間ほとんど起きる事無く眠っていた
。
眠りすぎたせいか、身体はだるいし、自律神経は悲鳴をあげていた。このまま
まだ布団の中にいたかったが、ここで負けては今までのこの半年の努力が無駄
になると言い聞かせ起き上がった。

アモキサン25m×3、レキソタン5m、スルピリド100m、テノーミン25mを服用して
煙草を数本灰にし、トイレに何度か行った。ＩＢＳももっている僕には辛い時
間だった。

子供達が保育園に行く時間になったので見送る事にした。妻が重たそうにごみ
袋をもっていた。手伝ってあげたかったがその一言が言えなかった。

自分を責める。金曜日は良くやった。ＰＤを起こしてぶったおれ、それでも会
社に残り、孤独の中新人の歓迎会にも参加した。何も責める事はないじゃない
か。自分の中で葛藤する。責める自分と誉める自分。

煙草がどんどん灰になっていく。

出勤時間が近付いたので身支度をした。どこか足に地のついていない感は取れ
なかったがそれでも気合を入れて外に出た。外は昨日の気温を引きずっている
のか涼しく感じられた。本来なら気持ち良いと感じるべき状況なのだが、心に
ゆとりがないのか、その清涼感が作られたもののように感じ、心地よく受け止
める事が出来なかった。

駅までの足取りが重い。

会社に行くのが怖い。

また倒れたらどうしよう。

どんどん重くなる足を止めないように必死に動かして駅まで向かった。駅に着
いた頃には冷や汗で背中が濡れていた。

そこへ電車が滑り込んできた。お盆もあけたので電車内はいつもの混み様を見
せていた。息が苦しい。また倒れるのではという恐怖が頭を過ぎった。
精一杯息を吸い込んで、ゆっくりと吐く。これを何度も繰り返して漸く会社の
最寄駅に着いた。

駅に着いた後、郵便局でお金を下ろし、銀行に行き、そのお金を振り込んだ。
休日中にオークションで落札したＧ－Ｓｈｏｃｋの代金だ。

オフィスに入る前に気付けの一本を決めこむ。

自席につく。息苦しさは抜けなかった。口ではあはあと息をしながらメールの
チェックをした。メールチェックを終えた頃には酷い疲労感と息苦しさに耐え
られなくなっていた。これだからＰＤはおっかない。すっかりトラウマになっ
てしまっている。

お昼、妻と一緒に外に出た。妻は心配そうに僕の傍らを歩く。僕はゆっくりし
た歩調で前に進む。妻が申し訳なさそうに今日もラーメンでいいか聞いてきた。
僕はいいよと返事をしてまたゆっくりと前に進んだ。
全身に酸素を巡らせるように深呼吸をしながらお店へと向かった。

食後、歯磨き粉と下の子の離乳食を買いオフィスに戻った。

自席につく。午前中よりは息苦しさが抜けている事に安堵の溜息が漏れた。
しかし、仕事をしようとするとまた息苦しさが戻って来た。とりあえず深呼吸
をしてその場をしのぐ。

今日はこれから歯医者がある。それまでにはこの心臓と肺の機能を少しでも正
常に戻そうと懸命に深呼吸をした。

歯医者に行く時間にはだいぶ楽になっていた。歯医者に行く。相変わらず歯根
の治療が続いた。治療も終わり帰ろうとしたら呼び止められた。膿胞の大きさ
を確認するためにレントゲンを取らせてくれないかとの事だった。僕は歯科医
の言いなりになりレントゲン室へと向かった。
レントゲンを採り終え、会社へと戻った。

自席につく、相変わらずの息苦しさである。

今日は大阪から来ている友と会う予定である。友にメールしてみた。少し早い
が会えないか？と。友は快諾してくれた。僕は急いで身支度をして逃げるよう
に会社を後にした。

渋谷で友と再会した。友は僕が来るまでに買い物をしていたようで上機嫌だっ
た。何を買ったのかと聞くとウン万円もする靴を買ったというのだ。金銭感覚
の違いに眩暈が起きそうだった。

友と居酒屋で乾杯した。歓談していると僕の携帯がなった。
妻からだった。
用件を聞くとどうやら家のカギを持ち忘れたらしく家に入れなくて困っている
との事だった。なんてタイミングの悪い。友に釈明し、家の最寄駅へと急いだ。
駅前には妻と二人の子供が待っていた。ずいぶんと待ったであろう事がかわい
そうになった。妻にやってしまったことは仕方ないと諭すと、申し訳なさそう
な目で僕を見つめ返した。僕は何を言ってやればいいか分らず、曖昧に微笑し
た。

その後、家へと帰る。中途半端なアルコールで煽られてしまった僕の身体はな
かなか治まりがつかなかった。思わずテーブルの上にあったものに思いっきり
アッパーを入れてしまっていた。はぁ、まったく。

寝る前に、前から欲しかった靴をオークションで落札して就寝しようとした。
しかし、すっかり冴えてしまっていた頭は睡眠を許諾してはくれなかった。仕
方なしにレンドルミンを服用して眠りについた。