はりはり鍋というのをはじめて食べた。鯨肉と水菜だけのさっぱりした鍋で関西地方が主流らしい。ここは大阪。今日は初めて息子と二人で一泊二日の夏休み旅行に来ている。
姉娘は勉強で忙しいし、夫も時間が取れない。近場には何度が連れて出たけれど、それだけじゃちょっと可哀想かと前々から来たがっていた大阪の水族館海遊館を目当てに出かけてきたのだ。
ホテルに着いて今晩は何を食べようかと声をかけると、「みせてみせて」と横からガイドブックを奪い取る。どうしてそうなったのか全然分からないのだけれどグルメなのだ。大阪っててっちりが有名なんだよね。おでんは?串あげもいいな、とさんざ物色した後に鯨料理の宣伝を見つけたのだ。えっ、この暑いのに鍋??と思ったけれど、泊まっているホテルから歩いていけるところでもあって、行ってみようかということになった。
鯨を食べたのは初めてだったけれど、刺身も鍋もおいしい。刺身は濃い目のトロ、鍋にすると鴨のような味わいだけれど、部位によって味も食感も随分違う。
本人が好きなことをしているときのこの子は楽しい道連れだ。一口食べては心から満足そうな表情を浮かべているのを見てそう思う。表情が豊でこっちもうれしくなる。どこで違いがでるのかわからないのだけれど、姉娘は味覚がお子ちゃまで辛いものはだめ、寿司もわさび抜き、そして何より新奇なものが全くだめ。ここに一緒に連れてきていたら、引きつった顔でメニューを見渡して、「私はのり茶漬けだけでいい!」というに違いない。
まあ、本来子供連れでくる場所ではないんだけれど。地図を片手に来て見て気づいたのだけれど北新地といえば大阪でも有名な歓楽街よね。黒服さんやら着飾ったお姉さん方がひらひらする所に来ちゃってUターンしたかったけれど、餌を前にしてあきらめる息子ではない。そうこうしているうちに店の看板を見つけたら今度は入り口が分からない!“この奥“と看板に出てはいるけれど、えっ、どの奥よ、こっちは地下にいっちゃうしとまごついていたら、「あっ、こっちだ」とするりと路地の奥に入り込んでしまう。どうして、こういうところはすばしこいんだ?!
最後に残り汁に入れた細うどんをすすりこんで、これで大満足でしょうとホテルへ帰ろうとすると「あっ、ふぐだ。もうちょっと入るよ」
欲望のコントロールが君の課題なんだ。
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