番号選びゲーム
『1997年4月に、英国『ファイナンシャル・タイムズ』紙は、経済学者リチャード・セーラーによって提案されたコンテストを行った。コンテストの勝者にはロンドン-ニューヨーク間またはロンドン-シカゴ間の、英国航空往復ビジネスクラスチケットが2枚プレゼントされると発表された。このコンテストで読者は、0~100の間の整数を1つ選ぶように求められた。そして勝者は、参加者が選択した数字の平均値に3分の2をかけた値に最も近い数字を書いた人である、と決められた。 『ファイナンシャル・タイムズ』紙は、読者の理解を助けるために、以下のような短い実例を提供した。コンテストに5人が参加して、彼らが10、20、30、40、50と書いたとしよう。この場合、平均値は30であり、その3分の2は20である。したがって、20と書いた人が勝者となる。 この「番号選びゲーム」のポイントは、もしあなたがこのコンテストに勝ちたいと思うならば、他の参加者がどう考えているかを理解する必要があるということである。たとえば、上の設例で20と書いた人が勝者となると書いてあったので、このコンテストに参加する人が全員、設例どおり20を選ぶとあなたが考えたと仮定してみよう。この場合あなたは、20の3分の2、すなわち14に最も近い数字を選ぶべきである。 しかしあなたが、ここでもう少しよく考えてみると、他の参加者もほとんど皆同じような考え方をしていて、その結果14を選ぶことを計画している可能性があると思うかもしれない。その場合、あなたの最も良い選択は10(=14×2/3)になるだろう。そして、あなたがこのようにして自分の選択を再考し続けていけば、結局勝つためには1と書かねばならないということに気づくだろう。そして皆がこのように考えたとすれば、実際勝者は1と書いた人となるのである。 ところが、普通の人々、しかも高等教育を受けた人々のグループであっても、勝者は1と書いた人にはならないだろう。2枚の大西洋横断往復切符がかかっている『ファイナンシャル・タイムズ』紙のコンテストでは、勝者は13と書いた人であった。もし仮に1を選んでいたとすれば、参加者は誰も自分の選択を誤らなかったということになる。しかし実際には13と書いた人が勝者であったということは、ほとんどの人が誤りを犯したということになる。このゲームの本当のポイントは、あなたがこのゲームをきちんとプレーするためには、他のプレーヤーの誤りの程度に関する理解が必要になるということである。脚注:このコンテストには1,468名の参加者があり、回答の平均は18.91だった。正解の13を言い当てたのは、31名だった。』(『行動ファイナンスと投資心理学』 ハーシュ・シェフリン著 鈴木一功訳 P7)単純に考えて、全員が100だった場合、答えは67(全員はずれ)。だから、0~67までが答えとなる。仮に全員67だったら、答えは45。どんなに考えても、45以下の数字が答えになると考える。回答の平均は19ぐらい。19を2/3で割ると約29。これまた単純に考えると、大方の人は、回答の平均が30であると考えたことになる。私の場合は、1とは答えないだろう。全員が45と答えた場合の答えは30。この数字が一つの目安になっているのかもしれない。19という答えは、大きすぎるように感じる。そんな感じで答えを書き込むと思う。あなたは私であり、私はあなただ。あなたの頭の中身は、概ね私と同等だろう。ここで言うあなたは、世間一般の人ってことで、大方の人は、自分は平均以上の知能を持っていると考えてしまっている。自分が適当に考えるぐらいが、世間一般の人が真剣に考えるのと同等だ。我が身を振り返ると、心当たりがないこともない。こういう卑しい考え方が、大衆心理を醸成し、世界に揺らぎを持たせている。自然によって齎された、人間の能力の一つなのだろうか。