この井上靖『氷壁』を
わたしは1966年(昭和41年)25歳の時に読んでいる
こんなことはわたし以外どーでもいいことなのだが
18歳の時から読んだ本のタイトル・作者・日付を
忘れずにノートしているのでこんなに詳しくわかるのである
このことでいいことがある
実はこの本を読んだのだけれどすっかりストーリを忘れてしまった
しかし、この日付により読んだ当時を思い出すことができる
結婚はしていた、まだ子供も生まれていなく
通勤していて、公団住宅団地の生活
きっかけはなんで読んだのだろう
この本がベストセラーになったのが昭和32年だそうだから
41年なら約10年後だ
ザイルが切れたとか登山とかにわたしが興味があったとは思われない
自分で購入したのか、借りたのかもわからない
購入したのなら今も持っているはずだから
借りたのだろう、はたまた父の本だったのか
父は山登りが好きだったから
と、とりとめのないこんなことはいい
ロングセラーだったのだ
今だって文庫本重版多く読まれているのだから
読んでおどろいた
これは通俗小説(ちょっと古!)じゃんか
有名なナイロンザイルの強さなんかどーでもよくて
でもないが、登山の科学的ドキュメンタリー風ではなく
男の友情にひとりのよろめき美貌女性がからむ恋愛物語
とは井上靖さんに大変失礼のようだが
小説が低俗といっているのではない
今読んでも立派に、しかも真摯に書かれているし
文章とはこういうものを言うのだと思う
このころはこんな小説が新聞小説であり、流行であり
ベストセラー本になって出版界を潤していたんだなぁと
感慨しきり
他にも『挽歌』『美徳のよろめき』『鍵』『楢山節考』などなど
ところで、昨日は「昭和の日」だった
新聞を開いて「あれ?いつのまに「みどりの日」が...」
とボケたのだが、もう2007年には変わっていたんだってね(笑
記事には
昭和がわたしたちのようなもろ生きた人たちにも
知らない若いひとたちにも
懐かしがられている、とあったが
なるほど、なるほど
ベストセラー本などの出版界事情も
昭和時代はけたはずれだったのだから
なにがなし、もの悲しくも懐かしいことよ