アメリカ国籍の日系二世ケーン・アモウ(天羽賢治)が
その家族とともに
パール・ハーバーの日米開戦~強制収容所~忠誠テストをされ
血の証しのための戦場参戦しなければならなかった
険しく長い道のりを歩むのであった
日本語堪能なアメリカ市民として語学兵になり太平洋戦争に参戦の主人公
戦争前はロサンゼルスで日本人むけ新聞「加州新報」の記者をしていた
愚直なほど正義感あふれる彼が父なる日本と母なるアメリカとの
二つの祖国のはざまで何を見、何を経験したか
戦争が進むにつれ太平洋戦場の悲惨さ~ヒロシマ原爆投下~八月十五日
アメリカ戦勝国の一員として焦土日本に派遣された主人公
死の世界のヒロシマでの仕事
そうして
最後には東京裁判で通訳のモニターとして敗戦国の日本指導者に判決を告げる運命
二つの祖国を持つがゆえに苦しみに苦しみぬく魂の慟哭
山崎豊子作家は、天羽賢治個人の劇的なドラマもそえて
ドラマに次ぐドラマでこの長大なストーリーを書きぬいている
作家が「わたしの戦中戦後のしめくくり」とおっしゃっているように
歴史的な出来事の輪郭と深部を膨大な資料を読みこなし
わかりやすい構築にして、表されているのはさすが
トルストイの『戦争と平和』を意識して、と言うのもうなずける
だけれども
単行本で上中下巻、合計約900ページ二段組みの活字
わたしのほうも読む苦労が感動を超えそうであった