時代は19世紀始め、ジェーン・オースティン描く『説きふせられて』の世界
8年前
準男爵の娘と将来性がわからない平民の若者とが恋に落ち、婚約までした
けれども婚約解消の憂き目にあう
周囲に反対される理由は相手の経済力が胡乱で、しかも
社会的地位も釣り合いがとれないとのことなのである
説得されて独身のまま27歳になったヒロインが
寂しく、無為の日々を過ごしていたところ
ひょんなことで元婚約者と再会、またいろいろあって...
というストーリー
娘の父親は自分の美貌と社会的地位に虚栄心の塊なのだ
若いときは水も滴る美青年、54歳のいまでもまだまだ美男子なので
自分の容貌を鼻に掛けるのは、女性でも珍しいようであり
自分の社会的地位(準男爵)を有難がるのは、新興貴族の召使いより甚だしい
とオースティンの筆は辛辣
「虚栄心の塊」の親を持つと苦労する
ヒロインは次女だが、長子の姉は父親そっくり美人で気位たかく意地悪、独身
妹も結婚してはいるが性格悪く、ヒロインの日常は荒涼としている
しっかりした母親が亡くなると、父と姉の虚栄心浪費で財政逼迫
広大な家屋敷を貸家にしてしのぐことに相成り
借り手の海軍軍人妻の弟がヒロインの元婚約者というわけで
元婚約者との思いがけない出会になるいという皮肉な状況のヒロインであった
とまあ、ストーリーは進むが
結婚をめぐる状況の悲喜劇は現在も同じ
周囲に反対されてというより、自分の思惑で非婚化している現代
いわく
経済的の問題
男女の役割分担の不公平
そして非婚化したあげくの社会的弊害
わたしはみな結婚すればいいとは思っていないが
その非婚化の世界は荒涼としてさびしい厳しいものになる一面もあるだろうに
今回は岩波文庫『説きふせられて』(富田彬訳)を読む、少々古めかしい訳が
19世紀のオースティンの文らしく思え、前回読んだちくま文庫『説得』(中野康司訳)は
新訳とうたっているだけに現代の会話に近い