コレット著『わたしの修業時代』(ちくま文庫)を読んだ
若いころ青春の書などといわれたコレット『青い麦』
新訳で再読の折(感想『青い麦』)
あとがきを読んで、こんなみずみずしいものをコレットが50代で書いたのかと
作家の自伝に興味が走り、読みたいと思っていた本
フランス片田舎育ち20歳の娘コレットは14歳年上の流行作家と結婚後パリで暮らす
けなげで純真な娘は夫の実態を知って驚く
流行作家の内幕はゴーストライターが群れ集い、浮気はするわ、金銭にはしぶい
放蕩のゲス野郎、威圧的(モラハラ・パワハラ!)にからめとられて、日影妻
あるときから妻のコレットも夫のゴーストライターにさせられる始末
コレットの隠れた才能が花開いたのか
なんと、そのゴースト作品が受けに受け、劇場でも人気上演
時はパリのベルエポック時代(古き良き時代)
はなやかな女優とその女優と区別できないような高級娼婦や
ゴーストライターもどき芸術家やら、つまり裏社会・無名芸能人に囲まれ
コレットまでもが女優をやるはめになるのである
コレットの筆は冷静だ
夫には才能があるのだ、と看破
創造の力、構成する力、人の才能を見抜く力
プロデューサーに向いていたのだと
20歳から33歳の破綻までのコレット修業時代
それで作家になりましたというわけ
時代が古いし、しかもフランスの裏社会の芸術家が沢山登場するので
巻末の注釈を読まないと誰が何やらわからないのが少々うっとうしいが
なかなか示唆に富んだ回想録
これを現代に置き換え、芸能界などを想像すれば
よくある話と言ってしまえるかもしれない
それと、別れたくても経済的に自立できないなどでうじうじしている
翔べない症候群主婦が読むのにはうってつけかもしれない