短編集『風に舞いあがるビニールシート』
この風変わりなタイトルが直木賞受賞作
わたしは受賞作・作家だからと言ってことさら読まない主義
というか興味わかない、へそまがり
しかし
話題になったときから読んでおくんだったなあ、という作品は多々ある
その範囲に入る作家さんの作品であった
なるほどね
今に読み継がれる不変の真理を抉る作品群
短編の名手
現代版日本の「O・ヘンリー」かもしれない
わたしの好みで言えばこの6短編収録中「守護神」が一番好き
大学の第二学部に入学してくる学生たち
なぜ、働きながらの通学するのか
さまざまな事情を抱えた学生群像の事情もよく描けているが
「代返屋」ではなくて「レポート代筆屋」との本気対決が
学問ならぬ人生を真剣に考えさせてくれる
働きながらの勉学に時間は無い
膨大なレポート提出、試験を乗り越えるには
お手軽な手も使いたくなる
けれどもこの主人公はお手軽とは程遠くいまじめ学生で
「レポート代筆屋」に注文しに行くも
すでに確固たる自説のレポート内容に到達しているのだ
それを滔々と述べてしまうおろかしさ
「なら、じぶんで書きなさい!」と「レポート代筆屋」に突っぱねられる
「あなたは代筆がして欲しいのではない、愚痴をこぼす相手が欲しいのだ」
とせなかを押されていまや「守護神」になった「レポート代筆屋」のもとを去るのであった
すべては自分に還るのだとしみじみ思う
誰かがやってくれるのではない
全部自分がやらなければ何事も進まない
なかなかの筆力の作家とみた
他作品も読もうと思う