「晴れ渡った空は青いビニールシートと同じ色をしていた」
ひとつの映画が作れたほど印象い深く内容の濃い短編でもある
桜木柴乃さんの短編「起終点駅 ターミナル」文末尾の一節
北海道釧路のカーンと晴れ渡ったときの空らしい描写でもあり
(いつもは霧も濃いらしいのだが=原田康子『挽歌』)
この短編の初老の弁護士の来た道の
人生をくくればそんなふうに思うような印象も受けて
(といってもこの短編を読まない人にはわからないが)
たまたま
森干絵都さんの短編「風に舞いあがるビニールシート」を読了したばかり
なぜあの場違いのような青いビニールシートがこの短編に描かれているのか?
国連難民高等弁務官事務所で働く悩み多い女性の主人公が
そのビニールシートでなぜ「なごむ」のかわかり、ストンと腑に落ちたところで
昨夜はNHKで「UNHCR国連難民高等弁務官事務所」で働く女性のルポを見
シリアの難民問題もさることながら、それを手助けする人たちの苦労に
またまた殺伐たる印象を受け、どこに希望があるのかと、時宜を得た印象
あのくどくどしい青い色のシートは決して美しくない
ホームレスの小屋を作るし、災害の時屋根をおおうのもそれ
ほんと、よく見かけるおなじみだけど
ビニールシートは便利、ピクニックのお弁当の時にも
花見宴会のござにもなるし、工事場のちょいおき材料にも雨露しのげる
でもでも
あの色は美しくもない、味もそっけもない
桜木柴乃さんも初めて読む
この作家さんのハッとするようなフレーズに心ひかれた
例えば
「すべてが自由に見える生活は、案外不自由でこころもとない」(「起終点駅」)
とか
「花が大きいほど、できる影もまた同じ」(「たたかいやぶれて咲けよ」)
など