カテゴリ:読書メモ
久しぶりに倉橋由美子さんの2作品を読みました。
『スミヤキストQの冒険』というかなり分厚い本と『聖少女』、作者が最後の少女小説と称しているものです。 倉橋さんといえば2005年にもうじき70歳という年齢で急逝されてしまったのでした。 そのすぐ後に出版された『偏愛文学館』という倉橋さんの愛した本の書評集がわたしの好みに合い、そのなかのジュリアン・グラック『シルトの岸辺』を今年の春ごろ読みました。 なかなかシュールな文学と見受け、感心しておりました。倉橋さんの原点でもあるのでしょう。 ですからこの2作品もなかなかシュールでありました。 『スミヤキストQの冒険』 スミヤキストとは「炭焼き党」から連想される革命を起こすのが目的のある団体から、ある他の団体にスパイ&工作のため派遣された「Q」さんの物語。「Q」とはクエスチョンからきています。 書かれたのが昭和44年(1969年)ですからなにがなし全共闘が暴れた時代を彷彿させますが、そんなことは今となっては懐かしい昭和の時代の懐古調です。しかし、この小説は歴史的な詮索は関係なく「正義と信じたものを引っ提げて、硬直した集団の中でのひとり活動はコッケイでもあり、勇ましくもあり、果たして本人が信じているものがいいことなのか?とあれやこれや悩むのが人間というものだ、という落ちになるのでしょう。 とにかくこれぞ文学的だと文学好きが満足する小説でありました。 『聖少女』 こちらのほうは「父と娘」「姉と弟」のキンシンソウカンが複雑にからんだ小説で、やはり文学的な、あまりにも文学的な作品。決して興味本位ではおもしろくありませんが、小説の本筋、これって「どういうことなのか?」という謎が最後まで引っ張っていくのです。 この暑~い夏、文学作品を堪能したのでありました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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