カテゴリ:読書メモ
中編「穀田屋十三郎」「中根東里」「大田垣蓮月」の3作品所収
「穀田屋十三郎」は最近、映画「殿、利息でござる!」になっている (ひよこさんの感想ありますね) この中編も感動したけれども、「中根東里」に強く惹かれた 中根東里 天才詩人と言われていても(当時、江戸時代は漢詩であるが)後世に名を知られず 作品がほとんど遺されていず、生涯もあまりわかっていない人らしい 作者の磯田さん「じゃあ、どうやって調べて、書くのか?」 という疑問がわくが、文学研究者で社会経済史的な史料を読みこなす術にたけた方 『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』 と、これも映画でブレイク「武士の家計簿」の原作者でもあり 司馬遼太郎さんの史観とはまた一味違う、どちらかと言えば山本周五郎さんに近い この3編をまとめて「無私の日本人」としているところが 性善説に富んだ史観から書いていらっしゃると思う さて 「中根東里」という儒者の人物像 書物が好きで朝から晩まで寝食忘れて読んでいる人 貧なるが故、小坊主としてお寺に出される そこで成長したが好奇心旺盛な彼は 漢詩を極めるため唐音(中国語)を学びたいとて京都黄檗山万福寺に行く (余談だが、わが家はこの黄檗宗の宗派、親近感を持ったけれど) 彼は初期の目的、中国語はすぐ上達したが 禅宗とは「禅の心は行住坐臥のふるまいに宿る」で書見を禁じる場所 書物からも学びたい彼は失望し、そこも離れる (えええっ、わたしも興を削がれた、というのはどうでもいいが) 江戸にもどって「荻生徂徠」なる博識・文章家の評判を聞く そしてそこでもかれは失望するのだ、紆余曲折があって 書物を読みに読み ついに道をさとるというか、今でいう哲学を知るのである 磯田さんの文章による東里の到達したことは 「みなさん、書物には読み方というものがあります。書を読む人は、読む前に、まず大どころは、どこかを考え、そこをきちんと読むことを心掛けてください。(後略)・・・みなさんは道を得るために、まっしぐらに、書物のなかの大切なところをみつけて読んでいかなくてはなりません・・・」 書物は解説を解いていくのではなくみつけるもの、言うなれば書物は読まなくてもいいくらい 「天地万物一体」がわかればいいらしい なんか、わたしもこう書いてきてわかったようなわからないような(笑 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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