加賀乙彦さんは精神科医でありながら小説家、ということは知っていたが、初読みである。
「キリシタン大名 高山右近」も知っているようで「天草四郎」ほどは知らなかった気がする。
右近のカトリック信者としての伝記的小説ではあるけれど、いわゆる年代を追った人物像を描いているものでもない。その精神的な部分での生き方に迫っていることに感銘を受けた。
と言っても、宗教的にではなく人間の生き方に精神についてであるところが、この小説の神髄であるような、文学の愉悦とでも言いたい。
それは激しいものではなく、静かにわからせてくれるというか、悟らせてくれるものであった。
作者のよほどの手腕と習熟と努力かと思う。