カテゴリ:名作の散歩道
二十歳のころ読んでの再読。若い頃のはストーリーを覚えているものが多い。
これもすっかり把握していたと思ったが、そんな単純な小説ではなかった。 孤児でクリスマスと名付けられた男が放浪の末に真実の愛に目覚めたかに思えたが、黒人と白人の混血ゆえに屈折してか、陰惨な暴行に走ってしまう。クリスマスとは接点がないが、副主人公の白人の田舎娘リーナーがのんびりと全景を彩るのでホットする部分、でも複雑な構造だったというのが旧読の印象。 ま、間違ってはいなかったが、ジョゼフ(ジョー)・クリスマスだけが主人公ではなかった。 わたしの見るところ、フォークナーが創造した架空の町「ジェファスン」を描くところがこの物語の中心になってくると思う。 「夏草や兵どもに夢のあと」のアメリカ南部版である。 アメリカの南北戦争の激戦地として軍閥の雄叫びや火炎の亡霊が浮かんでくるのは、登場人物のひとりハイタワー元牧師の意識の中だけではない。 はめ込みパズルのようにいろいろの人々、いろいろの場面・情景がちりばめられている。 孤児と思われたクリスマス(クリスマスに拾われたから)のルーツもわかるのである。 現代にいたるまでの黒人と白人の複雑な人種差別問題、特に貧しい白人たちとの怨念のような確執。 そこに宗教(キリスト教)が絡み、わたしなど日本人がはかり知れないものがある。 古典なのに、そういうところがノーベル文学賞作家の先見の明。 まさに現代、そのるつぼ真っ只中のアメリカではある。 文学好きなら必読書だと思う。。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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