カテゴリ:読書メモ
知り合いにある宗教に入信している者がいる。
何かにつけて、会話や行動をその宗教に結び付けるので違和感はあったが、 性格がよく、むしろ親切でいい人なのである。 わたしは仏教でも神道でもどちらでも構わない日本人的無宗教派。 特にうるさく勧誘もしないし、普通の付き合いには差し支えない。 ただ、 終末思想をひたすら信じていてその宗教に帰依していれば、 自分だけは生き延びると本当に思っているのには心底驚いたし、 しかもその他の宗教ではだめだそうで、その自分勝手なその狭さがなんだかうそ寒い。 そんなことを思いながら、 松本サリンや地下鉄サリンテロを起こした「オウム真理教」とは何だったのだろうか? というテーマを採り上げた田口ランディさんらしい切り口の小説を読んだ。 らしいとは、率直で分かり易く、歯切れがいい文章を書く小説家と思っているから。 *** サリンをまいた実行犯死刑因Yとの、10年を超える面会や手紙のやり取りの交流をもとに、私小説風に描いている。 Yもこの作家の本が好きで、死刑因の外部交流者に望まれたのだ。 死刑因Yを拘置所に面会すれば、穏やかで理知的でいい人なのだとわかる作者。 それなら 「オウム真理教」とは何だったのだろうか? なぜテロにまで走ってしまったのか? がわかるのではないかと作家は期待した。 Yとやり取りを重ね、識者に会い、専門書を調べ、脱退者と行動を共にするうちに作家は「オオウム真理」に飲み込まれしまったかのようになる。 かえって拘置所いるYに「大丈夫ですか、もう調べるのやめてください」と心配されるほどになってしまった。 *** また、私の知り合い話に戻るけれども、 その人はあちこち身体が弱い。すぐ寝込む。 アレルギー性も強い。初めはシックハウス症候群だった。その次は芳香剤に息苦しくなった。 そして農薬の弊害を訴えだし、しまいには電磁波過敏症を言っていた。 でも、電磁波なんて今やそこら中に飛び交っているからどーするんだろうと思った。 第一その人はスマホを四六時中使っているのだ。 ドリンク剤だの、石のパワーだの次々と怪しげな(とわたしには思える)対処を自分でしていた。 そしてわたしもその内に症状が出るから、そのドリンク剤や効果があるという石をわたしにもくれる。 わたしは「症状はないし、そういう石だの飲み物は嫌いだから」と断るから、もう勧めすすめなくなったが。 その宗教の集会場に行くと具合が悪くなるようになって、行かなくなったのだけど つながりはほかの方法であるという、それがスマホのアプリなのである。 それにそれにそのひとの宗教のお仲間は同じような症状の人が多いような話!! それって、ほっといていいのか? 話半分に聞いているわたしでも本当に心配になってきて、 「もしかして難病かもしれない」「きちんと医学的に調べた方がいい」と アドバイスするが、お医者さんにはわからないし、いい加減なことされるから行かないという。 「ああ、これなんだなぁ」 何かを信じるということは、その信じたものを外から見られなくなるということ。 *** 『逆さに吊るされた男』というのはタロットカードの絵札12番の図柄だそう。 その図柄はとても奇妙で二本の木に渡した棒に片足を吊るされた男、 手も後ろで縛られて身動きできない。そんなにしていたら死んでしまうだろうに。 「なのに、男はどこか楽しげ。まるで、自らが望んで吊るされているかのように。」(P145) 作者はそのような意味で思いついて題名にしたという。 この小説にはその他、あっと思うような、ひらめいたような解きあかしがある。 松本サリンや地下鉄サリンテロを起こした「オウム真理教」事件は、カルト集団の行き過ぎた事件で、 事件を起こした人々を処罰すれば終わり、ということではない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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