先日亡くなった樹木希林さんに敬意を表して読みました。
映画は見ていませんが、プロログの徳江さん(おばあさん)登場の場面は希林さんの演技を彷彿させました。なるほど映画の脚本のような書きぶりの小説でもありました。
どら焼きの中身、小豆の美味しい煮方指南などは微笑ましいが、すぐに徳江がハンセン氏病完治者とわかってくるのにしたがって、じっとりと空気が重くなってくる。
登場人物の3人が3人とも、それぞれ社会から疎外されている屈託を抱えている。それをことさら怒るんではなく、恨むのでもなく淡々としているように描写しているのが、かえって胸迫るのだろう。
そういうことはみんなあるよね、といいながらそれが「みんなの思い」にならないことがわかっているからである。
普通が平等にならない、しかし人間の存在はみんな同じではないとわかってみれば、生きにくさに向かっていく勇気が出るのだ。