明治維新の江戸城明け渡しには物語があるということをみつけたのは、浅田次郎氏の『黒書院の六兵衛』だけか(?)と思っていたらまた巡り合ったこのエンターテインメントストーリー。
こんどは江戸城大奥が舞台で、登場人物も侍ではなく、大奥の女性たち、作者も女性。
時代に舞台を取って描く小説の人間性は、その書かれた時代の思潮に色濃く染まって、というのがある。このエンタメもしかり。
組織でも団体でも縁の下の力持ち的な働き手、手に職があるもの、生きていくための手段でも、さまざまな性格と力量によって変化していく。
お針の得意なヒロインが「呉服之間」という職場で活躍していても、いざその職を解かれるとどうしてよいかわからなくなる。キャラクターがはっきりしたそれぞれの職種「御三之間」「御膳所」の女性たちもそうであり、うろうろする描写が続く。
ちょっとそこら返はくどいかな。いつの時代も職場替えや転職やらは、一大事なことなのであるけれど。
それをまとめるのが、大奥の組織図から言うと上役の「御中臈」の女性らしい、ということが分かってきたところから物語の展望がよくなる。