カテゴリ:読書メモ
池内紀・川本三郎・松田哲夫さん編集のセレクト。みなさま1940年代生まれ。その年代が微妙に影響していて、同年代わたしの好みの短編が集められていることになるのはもっともだ。
ひとつひとつ、うなずきながら読んだ。 その中でも一番印象的なのは、やはり宇野浩二『夢見る部屋』 書き手のこだわりや好みが変わっていて、ちょっとめんどくさい性格。と読めるのだが、誰にでも思い当たるところのある心理でもあるなあと思う。 売れない作家が家を一軒借り、自分だけの部屋を持つのだが、それを誰にも見せたくないけれども、妻もいれば、お手伝いさんもいるのでおちおちできない。 すごく見せたくない事にこだわっているのだけれど、最初は人に見せられない事情があるのでもないよう。「閉じこもり」的な自分空間の夢想らしい。 ところが、しばらくするとこんどは外部にひと部屋を借りる算段をする。 短編にこんな文章がある。 「この世で何が一番好き」かと聞かれれば私は「山と女と本」と答える、と。 あらら、本音はそこか?ではそこで逢引きするのね。と思いきやその借りた部屋に女性を招くのでもないのだ。 山の絵をかざり、本棚に好きな本を並べ、お茶を自分で入れ、万年床で原稿を書いたり、本を読んだりするだけで悦に入っている。狂ったように楽しんでいる。 自分の好きなことを、心行くまでしてみたい。それが出来れば苦労はないよ。 人間だれしも持っている孤独癖や現代の人間心理はそういう傾向になりそうで気になるなあ、という展開がおもしろい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018年11月19日 17時26分16秒
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