カテゴリ:読書メモ
本屋の平積みでこの本に目が止まったとき、正直「何事だろう」と思ったのでした。
うっかりしていたのですが、2016年に映画化されていたのですね。それで再び見注目されたのでしょうね。 SF空飛ぶ円盤小説ものといい、著者が純文学の三島由紀夫氏いい、書かれた年代が1962年(昭和37年)といい、当時話題になっていいのです。 1962年ころと言えばSFは別世界の文学で、むしろ漫画的な軽いジャンルでしたよ。解説の奥野健男さんの文章にも雑誌に連載中「大丈夫か?」とはらはらしながら読んでいらしたとか。 でも大丈夫、あれよあれよという間に引き込まれて、設定時代を忘れてしい現代にも通じる暗喩・比喩がありました。特に人間に化けているとされる宇宙人たちの派閥争いの議論は圧巻です。(解説の奥野さんはドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟における「大審問官」の章のようだと) 宇宙戦争は何も武器を取って戦うだけではありませんのね。しかも三島流唯美主義のきらびやかな文章。「人間に化けている」大杉家家族の生活をなんと巧みに描写してあることか。 それにわたしには昭和37年という年代に注目してしまいます。 そうでした、当時はソビエトとアメリカが核実験競争をしていて終末的な不安もありました。冷戦時代と呼び、ケネディ大統領暗殺もこの後すぐ、三島由紀夫氏に至ってはこれから10年たたないうちに衝撃的な死を選びました。 「美しい星」になってほしい地球はこの小説が書かれてすぐ、月に到達したアメリカの宇宙ロケット乗組員の「地球は青かった」が今にして思えば皮肉なものです。 翻って現代、世界戦争の危機は去っていません。中国が月の裏に到達したとか、北朝鮮が宇宙開発のため(うそ)大陸間弾道弾ロケットを飛ばすやら核実験やら、アメリカもロシアも何やってるのだか・・・。ますます複雑になりました。少しも安穏な世界になってません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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