バスジャック犯人が示す「人を操る」人間掌握術描写にはおぞけをふるいました。ほんと嫌らしいまでのやり方で読んでいるこちらまで怒りがおきますよ、でもそれは宮部さんの筆の力。
おまけにバスハイジャックされた人質・被害者たちにも、連帯か裏切りかという試練を課す内容のストーリです。人間の隠された嫌な面の本質的なものを追求しているのです。
詐欺で騙される時、そこまでいかなくても人を貶める意図の行為をされたらとてもとても嫌なものです。あやつられたと感じた屈辱は心の傷になって残ります。それをこの『ペテロの葬列』はとことん描き込んであります。しかも平易な言葉の描写で。宮部さんの真骨頂です。
そんな作者のうまさはさておき、もう一つの読みどころは主人公杉村三郎がいよいよ探偵業になるらしいというところですね。このシリーズが面白くなりそうだと読み出したのですけど、どんなハードボイルドになるのかこれからが楽しみです。