「夫が亡くなった時点で、自分は誰の妻でもなくなり、晴れて自由の身だと思っていた。だがどうやら違うらしい。今もこれからも「高瀬家の嫁」なのだ。それも、夫が生きていた頃よりも、もっとずっと明確に。」(カバー帯「本文より」)
夫が死んでも「嫁」が残る不思議さ。小津安二郎の「東京物語」を彷彿させるところもあるが、もっとシャープで現代的だ。だのに古い。また、夫婦の物語でもある。結婚とは何か。ヒロイン嫁の高瀬夏葉子(かよこ)が東京は下町生まれ、舞台を九州は長崎にしたのが迫真。いかにして逆転させたのか。手に汗握るおもしろさ。これから結婚するひとも、してしまったひとも、してしまって歳取ってしまった女性にも必読書。
おまけ
夫はよく誉め言葉でとして
「田舎でよく言うところの”いい嫁を貰った”だねぇ」と言うことがある。ま、わたしが日頃心地よい家庭を作っていることに対する感謝だと思うし、もちろん
冗談で言っているのはわかるが、一度ならず何回も言うと、(この頃は一度言ったことを忘れて繰り返すようになったから)ものすごく嫌な気持ちになる。まったく
「嫁」という言葉はおっかない。