谷崎潤一郎『細雪』その後譚でもあり、モデル問題のようでもあり、小説とは何かをひも解いていくのでもある、のがこの小説です。
語り手、主人公「重子」が『細雪』の3女「雪子」であると明かされるところから始まります。あのたおやかで楚々としているのに、芯の強そうなところが見える美人。神秘的なのか、やはりうちを分け入ると自意識過剰なのか?
谷崎潤一郎という作家の老境・晩年(アラカンから七十代終わりで死ぬまで)の作家としての心境、書きざまを周りの女性から描いてもいます。
それにしても妻の妹、妻の連れ子の娘、妻の連れ子の息子の嫁、女性お手伝いさんが5~6名、と常に女性に囲まれて暮らす作家のその精力の旺盛さには並々ならぬものがあります。小説を書くために「ぎんぎらぎん」だったのか、もともと強いお人だったのか。周りの人々は危険性を感じながらも魅せられていくのはよほど個性的にすごい人だったのでしょう。それともお作品の方だけがすごかったのでしょうか。
桐野夏生さんの文章は相変わらずそつのないものでわたしにとっては読みやすいのでございました。