昭和の半ば1970年代にもとんでもない事件がいろいろあった。「連合赤軍のリンチ殺人」もそう。「永田洋子」という氏名は忘れられない。この小説はその事件に参加してしまった女性のその後の人生を虚実まじえて描いている。
主人公西田啓子は前期高齢者の仲間入りが間近、事件の秘密を抱え、出所後目立たないように生きていたのに2011年2月「永田洋子」が獄死したことによって、昔かかわった仲間にも居場所を知られてしまい、フリーライターの取材を受けないかと迫られる。それは断るのだが身内にもさざ波が立ち、決別したかった過去がよみがえる。結末はあっけにとられるが、あり得ると思わせる・・・。
「革マル派」「赤軍派」の特殊な団体の異常な事件だけれども、人間が共同社会で生きていくには避けられないことが含まれているのかもしれない。そののちの「オーム事件」でも知識人があり得ない行動をした。その時「なぜそうしたか?」はなまなか解明できるものではない。