フィリップの医学院での勉学が続いている。心の師クロンショーを看取る。再びミルトレッドの落ちぶれた姿に同情し、よせばいいのに面倒を見る。気質は永遠に変わらない。挙句にまた裏切られ決定的の別れ。しかしそのミルトレッドへの散財、株の失敗で文無しに、勉学を続けられず、2年間の苦労。伯父が亡くなり遺産が入りやっと医師免許を取得は、30歳になろうとしているのであった。結末は解説にもあるように賛否両論、拍子抜けするのであるが、わたしは心からホッとした。
と、あらすじはさすが3巻の大部、変化に富んで面白く登場人物も多く読み応えある。だが教養小説なのでフィリップのこころの成長記を読み取るのがメインなのだろう。わたしは「人間の絆」を「つながり」にとらえていたが、解説によると原題は「絆=つながり」よりも「隷属」「束縛」の意味が強いらしい。だから
「人間の隷属について」「人間の束縛について」になるという。人間には理不尽な執着をするところもある。そのどうしょうもない状態から抜け出すには、意志力を持ち、経験が必要、というのならすごくよくわかるのであった。半生を振り返って
「ああすればよかった」「なんてばかなんだろう」と思うことのほうが多いのが人生だと思う。でも
「今ここにいる」のその姿が正解なんだよね。