カテゴリ:読書メモ
(相変わらず、松本清張さんの未読作品をつぶしています。本当に作品を多く残された・・・!)
***** 昭和17年、主人公は徴兵検査で第二乙種不合格だったのに32歳にして召集令状が来てしまった。入隊後のいじめ、残してきた家族への思い、朝鮮への転属、死なずに復員してきたのに家族6人は広島の原爆で死に、たった一人になってしまった。戦後の混乱そして赤紙を書いた人たちへの恨みに凝り固まって、復讐を目指す。 ***** そんなことを言ってはなんだが、ありそうなストーリ、だが、清張さんにかかると迫真だ、ご自身の経験もあるそうなのだが。 主人公はちょうどわたしの実父と同じくらいの年齢、父も教育招集は受けたが、その後、乙種だったからなのか、役所勤めだったからなのか、ツテがあったのか戦争中ずっと父はいた。ま、わたしは昭和16年生まれだからなにせ幼児、後から聞いた話。でも、母は、家族は心強かっただろう。わたしたち幼い姉妹も苦労してないはず。 それに比べてこの主人公色版画工の職人は自営業ゆえ、自分がいなければ商売ができない。その苦労を残った家族にさせ、あげく帰還しても、何もかも失ってしまったことがわかる。なぜ自分がこうなるのか、不公平への悔しさ、恨み。 この不条理を述べないでなるものか!という意気込みがひしひしと伝わる。 しかし、作者は「かたきを撃って」ストーリをおしまいにしない。 だいたい「かたきとは何か?」戦争というものか、政治家か、軍人か、国家なるものを憎むべきか。大きく言えば人間の営みの矛盾か。 小説の最後、主人公の頭の中で 「・・・・・マモナク、ソチラニイク。ヨシコドノ」 という電信文の想起に、泣いてしまった・・・・・・・・・。 解説に代表作の大作『昭和史発掘』がこの小説と同時進行とある。氏が何に情熱をかけたのか伝わるではないか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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