カテゴリ:読書メモ
新潮社版「山本周五郎小説全集・別巻4」1943年(昭和18年)の戦中に新聞小説として連載されたもの。
なぜかわからぬが読み残してあった1冊。 解説をよんでみてわかったのだが、著者自身も自信作でなかったらしい。わたしも読み始めがしっくりこなかったので途中でほおっておいた。これでほとんど全作品を読んだことになるから、とにかく決まりをつけたくて読む気になった。 しかし やはり山本周五郎の世界だ。なかなかに読みでがあって、言わんとしていることはよくわかる。 時代は江戸末期(嘉永5年1852年)幕末の混乱期、水戸家と幕府の確執を下敷きにして、若い二人の男(早水秀之進と太橋大助)の友情と運命を追っている。斉昭、藤田東湖、水戸、攘夷論、大政奉還、討幕、佐幕など・・・が飛び交い、ふたりの会話がとくに讃岐高松の郷士秀之進の独白が作者の気持ちを代弁している。日本の国難、行く末、あり方、国民の自覚が語られるけども、簡単ではない、誤解も起こる、それは太平洋戦争末期の「言いたいことが言えない」作家の苦しみと重なる。 維新でも悩み、戦争に突入でも悩み、戦後でも悩み、現在も日本の存在は混とんとしている。そういう思潮的なところが熱いといえば熱い、若い山本周五郎の作品であった。 出版社が全集を出して作品を網羅したく、古いのも拾って入れたということであろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019年12月23日 10時18分45秒
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