カテゴリ:読書メモ
人間性を蝕む「不条理」と出合ったときに人々はどうするのか?どうなるのか?
「ペスト」という疫病が「不条理」に設定されていますが、それを置き換えても当てはまります。「災害」「戦争」もちろん喫緊の課題「新型肺炎コロナウイルス」にも。 そのようなわけで再読しました。といってもすっかり忘れていますので、初めて読んだようになりましたけど。 ノーベル賞作家であり古典ですから当たり前なのですが、ストーリーが半端なく、うまいなあと思いました。リアリズムというか、映像を見ているように描かれ、平明な文章と文脈で淡々と綴られている、文学らしい文学を味わいました。 アルジェリアのオラン市というところでペストが発生、市が封鎖され、閉じ込められた人々が疫病という困難に立ち向かう人間模様(深刻ですが)に共感します。中世のペスト時代のことは想像でしか分かりませんが、これが書かれたのは1940年代、小説の時代設定も同じで、近代的な状況での災禍なのです。電話もあれば自動車もある文明の都市における非常時の人間たち。 始めの小さな兆候、次第にわかる状況におびえる市民、行政の不備に怒る人々が現れ、専門家の意見は分かれ、ゆっくりした整備、数字は跳ね上がり、社会生活の不自由、別れの悲嘆、宗教の介入、あきらめと通過への希望。そして絆。嵐が過ぎ去る。地味にとんだ普遍的な文学だと思いました。 今、に示唆があるか?この描かれた70年前のように、現代の疫病はそんなに簡単ではないという気はします。世界がつながってしまっていますもの。封鎖はあってないようなものですから。カミュさんも真っ青。いえ、予言はしていらっしゃいます。超現代の試練です。 ペスト(新潮文庫)【電子書籍】[ カミュ ] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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