若いときを振り返るっていうのは恥ずかしいか、なんとなく盛ってしまうか、飾ってしまうか、照れくさいものだけれど、それも振り返る時期(年齢)にも関係してくるのだろう。
この
『きみの鳥はうたえる』は佐藤泰志氏30代のデビュー作でおとなになりたくもなく、おとなになりきれず、でも、おとなになってしまわないといけない・・・という21歳の青春時代を私小説風に書いている。
なぜ私小説風と言うのかというと、
磊落で硬質な書店員の
「僕」と書店員仲間の
「佐知子」の恋人関係が、「僕」の友人
「静雄」のナイーブな優しさにつつまれて、恋人関係が静雄と佐知子に何事もなく移るなんてあり得ないこと。三人の関係が壊れてしまうのかと思いきや漂っているようになるのは、やっぱり僕と静雄は同一人物で、作者の分身だからと思えてしまう。(わたしの「盛った小説」説によると)
すてきな題名はビートルズの曲「アンド・ユア・バード・キャン・シング」から。
どうしても青い鳥をさがしてしまう若いときがある、生き生きしたものを求めてあがく時がある。
平禄されている『草の響き』はもっと作者に近いという、井坂洋子さんの解説がとてもいい。