第一部「そこのみにて光輝く」は息を張りつめたような若さがある。くっきりした登場人物像たちの描写がうまい。特に中心の「達夫」と「千夏」がいいなあ~暗さの中にキラキラしたものがある感じ。
「千夏」の弟「拓児」に誘われて「達夫」が訪ねた家は、開発に取り残されたようなちいさなバラック小屋だった。両親と姉弟が住んでいるその家は、生活・生きざままでもが壊れてすさんでいるようだった。しかし、そこには家族の強い矜持があったのだ、と思いいたる導入部に惹きつけられる。
若くてなにものかに飢えている「達夫」が「千夏」とそれからたどる恋の道筋はすごくいい感じだ!!
けれども、第二部「滴る陽のしずくにも」の二人のその後になると、おや?と思わされる。それは「千夏」があまりにも後ろに下がり過ぎて影薄い。伝法な「千夏」が普通に閉じ込められてしまったようだ、至極残念。