「虫唾が走るような不快感」が癖になってしまうという桜庭一樹さんお勧めの一冊。確かに嫌な気持ちになりながらも読むのをやめられない。自分の胸に問えば邪悪な部分がないとは言い切れない。人間の意地悪な妬み心が高じると、自制が効かなくなる哀しさ、お屋敷の火事に乗じて村人が略奪・暴行に至る過程が怖い。
そんな人間心理を個性的な美姉妹をヒロインにして綴るシャーリィ・ジャクスンという作家の心理力に興味惹かれる。ゴシックロマンという作風は、20世紀はじめのイギリスアメリカ女流作家に多い、ダフネ・デュ・モーリアもそうだった。もっと言えばシャーロット・ブロンテからも始まっているのね。