カテゴリ:読書メモ
幼いころや若いころ頃に読んで興奮したミステリアスな物語のパターンは、「古い広大な屋敷に数々の部屋があり」「その屋敷の家政を取り仕切っている怖い女管理人(女中頭とか)が居て」「ヒロインはどこかひねくれて孤独の女性」だったのです。
つまりバーネット『秘密の花園』は伯父さんの大きなお屋敷、怖い女中頭のメドロックさん、わがままで気難しい孤児のメアリが主人公。デュ・モーリア『レベッカ』では結婚したマキシム所有のお城のようなマンダレイ屋敷、使用人の得体が知れない意地悪なデンバース夫人、ヒロインの質素で孤独な独身女性「わたし」という構成なのです。 ここでも丘の上の屋敷、エレーナという孤独なヒロイン女性と厳格で頑固な管理人料理人のダドリー夫人が登場します。 ただ、大きく違うのは、『秘密の花園』が荒涼としたムーアの風が吹くに屋敷の中で子供らしく探検するのと、『レベッカ』がツツジの花の香りと霧にまかれてそくそくと謎めいていくのにたいして、『丘の屋敷』は湿った寒い空気に触れられて、ぞおっとする超常現象が起こるのですが、それをどう理解するのかで違ってくるのです。ええーっこんなこと信じられない!ではだめなんです、正直わたしは途中まではそうでしたけどね。 しかし、シャーリィ・ジャクスンの『お城で暮らしている』でも描いていますが、ヒロインの女性の個性・気質・属性がなんとも真に迫っていて、読み終わったときにはこちらが鬱々としてしまうのであります。 この物語冒頭の 「この世のいかなる生き物も、現実世界の厳しさの中で、つねに正気を保ち続けていくというのは難しい」 という言葉が恐ろしくなります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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