セイヤーズやオルツィの推理ものに夢中になった時期はあったけど、まだまだ知らない20世紀初頭のイギリスの探偵物作家がいらしたんだ、ということで話題にならねば読む機会のなかった一冊。たしかに軽くて楽しい意味深い読物です。
ジーヴズという賢くて世慣れた執事がついていれば、お気楽で自律性や自立性のない若殿が、生き馬の目を抜く世の中を渡っていけるっていうの。生計を身内の支援で暮らしているのに幅とって、若き殿のこと故、魅力的なしかし、いわくありげな、ふさわしくない女性に惚れてしまい、困った挙句、修正してもらうのがこの執事さんなので。
しかも、若殿バーティーばかりでなく、竹馬の友ビンゴまで同じようなことをやらかすので、それも何回も、友達まで助けてもらうようになる。つまり、この本では繰り返し難題が持ち上がるが、ほとんどが困った縁談がらみというわけで、どうして話題になったのかを含めて、むずむずしてしまう。
貴族的暮らしをしているバーティーもビンゴもお金持ちかもしれないが、叔父さんから貰っているお金でしょ、叔父さんたちの機嫌を取らないとならないかわいそうなところもあるのですよ。人間そんなところ大いにあり、と納得でもあるけれども、大いに笑ってしまいます。