金融機関の横領事件、容疑者が女性で億単位の金額となると、陰に男あり好奇の目。それをまことに切なく描ききる角田光代さんの作品です。憎めないんですヒロインを、同情ではなく、突き抜けてしまったところにむしろ羨望かな。
主人公梅澤梨花と夫との関係、その友人たち3人の夫婦関係を描いたところがおもしろいです。満たされざる者のあがき。でも、他者に与えてもらい、ときほぐしてもらうのではない、自己の中にある気付きを、探り当てなくてはいけないのです。
人間にとって必要なものは何か、それはお金やモノではない。わかっているけれども、欲望にはまるのが人間。とりあえず満たされるので。登場する女性たちが買い物依存症になって、買って買いまくる姿にハラハラドキドキしてしまった。もしかして自分もやっていたか。また、友人の一人はケチりにケチって貯蓄に励む日常、それもお金に執着だもの、むなしくやるせないのは同じです。
スピード感たっぷりの女性心理を巧みに絡めたなかなか読ませる、好きな作品です。