山本周五郎の婦道記もの。作家自身が厳選した11編『小説 日本婦道記』は昔読みました。今回の文庫本は埋もれていた20編が加えられて31編に増えて、あの感動をたくさん味わえる、ファンにはありがたい完全版です。
しかも「婦道記=女性のあるべき道」と前なら解釈したでしょうが、わたくしも今は違います「人間のあるべき理想の姿」に気づかされる作品なのです。作者が言論統制ある戦時下の中で苦しみながら作品を書いたというのも理由、周五郎さんの言いたいことはずっと変わらないので、それが戦後の素晴らしい作品、例えば『長い坂』や『樅ノ木は残った』に結晶されたのをわたくしたちは読むことが出来るのです。