語り手の姉「巻子」はシングルマザーで生活に疲れているし、娘ともうまくいってない。娘「緑子」は声に出して会話せず、メモで意思疎している異常さ。
緑子のノートに書き連ねた文章と、叔母の独白で綴られる、もの哀しい女の身体の変化と切ない気持ち。すなわち思春期のゆれる娘心と39歳母親の経年へのあがきに加えて、語り手叔母すらもあせっていたのであったという現実。
けれども、独特の語り口はねっとりしているようで軽妙さが伝わってくる。この文章が魅力をかもしているのだろうと思う。
叔母の名前が明るさを想わせる「夏ちゃん」と最後にわかるのが印象に残った。