むかし読んだのは1962年。作者案内にはその年にノーベル賞受賞とあります。映画化もあり、話題だったのでしょうか。でもストーリーをすっかり忘れており、初めて読むような感じになりましたのが、個人的などうでもいいことですがわたしとしまして不思議。なぜなら社会機構の矛盾というような題材に関心があった若い時代、記憶の底に残ってもいいのだろうに、ということです。ま、未熟だったのですかね。
さて、上巻を読み終えて、もちろん底辺にある近代資本主義の矛盾を突いているのは痛いほど分かります。でもねえ、ジョードー一家がオクラホマからテキサス州、ニューメキシコ州、アリゾナ州そしてカリフォルニア州へと、故郷を捨て新天地へ困難な旅するさまを、簡易地図でたどりながら読んでいると、その情景描写の目に浮かぶような筆運びに魅了されてしまうのです。
この一家13人は苦しい悲惨な旅なんですよ、老人たちは旅に病み死に、若者は怒り、かたや無気力になり失踪し、一家がバラバラになっていく。しかし、それも時代を超えていつの世にもある。その普遍性をある物語に圧縮して解きほぐしていく、これぞ文学の骨頂というのですなと、感心してしまうのでもあります。
『エデンの東』の読書メモ