本家のカポーティ
『冷血』と同じく、普通に暮らしていた一家が強盗殺人に巻き込まれたのが痛々しい。そこに
『リヴィエラを撃て』『照柿』『マークスの山』『レディ・ジョーカー』でおなじみの合田雄一郎が登場し、彼の人生模様も変化している。
犯人たちの人生も描かれ、やりきれなさが増す。残忍な犯人たちであったのか?
カポーティ『冷血』で怖さを経験しているのに、筆運びが真に迫っている(相変わらず緻密だ)恐ろしさ。刑事合田でなくとも悩んでしまうし、処理できない思いもする。普通に暮らしていると思っている自分自身に悪がないと言い切れるのかと。
その合田の私生活心情の変化、朝早く農家の手伝いしに行く合田、「合田はわたしです」という、高村薫作家自身が主人公になって行く感がますます濃ゆい。